第1話
今宵は誰が主人公か。
はじまり、はじまり---
いつもの声。聞きなれた、聞き飽きた声。
いつもの風景。見なれた、見飽きた風景。
いつもの場所。全てが"いつも通り"。
でも、ここしかない。
いくら飽きても、ここしかない。
ここにいることしかできないし、どこかに行こうとも思わなかった。
それをしないのは、したくないから。
それをしたくないのは、面倒だから。
ここでいい。このままで。
『これでいい。このままで。』
そう言い聞かせる毎日。
退屈だけど、退屈しない、矛盾した毎日。
繰り返される同じ日々。
そうして過ごしてきた自分にとっては、それが全て。他があっても知ったことではない。「飽きた」という感情も、聞きかじったもので、自分のものではない。そう思った。
ここには自分の事を呼ぶ声がいる。
『ここには自分以外にもいる。』
いつも通り、呼んでいる。
いつも通り、聞こえている事をアピールして、無視した。
いつも通りの定位置で。
『いつも通り、呼んでみた。』
『いつも通り、無視された。』
『いつも通りの行動パターン。』
そのうち、呼ぶ声が聞こえなくなる。気配とともに。
『そのうち、呼ぶのをやめる。』
『ついでに出て行く。』
その頃合いを見計らって、呼んでいた声の方へ向かう。
『頃合いを見計らって、やって来たのを見届ける。』
いつも通りの日常。
もちろん、呼ぶ声に怒っているわけではない。ただ、その時間はいつも面倒なのだ。
『いつも通りの日常。』
『無視されるのは、慣れっこだ。別に嫌われているわけじゃない。』
それを分かっているくせに、いつも通り呼ぶ。
今度は来てくれるかなって期待を込めて、呼んでいるようだ。
『今日は機嫌いいかな?来るかなって呼んでみる。』
『期待を込めて、呼んでみる。』
分かっているから、時々行ってやる。
自分はあくまで上から目線。
それでも、行くと喜ぶ。
毎日一緒にいるのに、面白い。
そんな反応するから、たまにこうして呼んだらすぐに行ってやる。
『来てくれれば、いつも嬉しい。』
『しょうがない、そういう感じで。』
『それでも、可愛く、愛おしい。』
『そんな反応されるから、毎日呼んでしまう。』
そうして、一緒にご飯を食べる。
自分はマイペースに。
呼んだ方は、急いでいたり、ゆっくりだったり。
見ていてこれだけは飽きなかった。
『そうして、一緒にご飯を食べる。』
『急いだり、ゆっくりだったり。』
『面白がられているに違いない。』
『見られている気がする。』
そんな日常。
変化は多少あっても、全てが"いつも通り"。
お互いが、探り合い。
時々は独りになるけど、それも1日2日程度。
あとは、ほぼ一緒にいる。
『時々独りにさせちゃうけど、それも1日2日程度。』
『あとは、ずっと一緒にいる。』
笑ったり、泣いたり、怒ったり、悲しんだり、凹んだり。
落ち込んだり、不安だったり、喜んだり。
これも飽きない。
時々付き合わされるのは、多少迷惑。
でも、嫌じゃない。
自分に干渉されるのは、抵抗がある。
それでも、嫌いじゃない。
『感情は多少読み取れる。イライラだったり、喜んでいたり、怒っていたり。』
『時々愚痴ってしまうけど、それでも付き合ってくれているようで、ますます好きになる。』
だから、一緒にいる。
呼んでくれるから。
面白いから。
ね、主人。
『呼んでも来てくれなかったり、かと思えば邪魔して遊んでアピール。』
『気ままに、自由に、気高く。』
『それでいて、繊細で、時に甘えて。』
ね、〇〇。
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