第33話 眠る
そして、全校生徒のお化け屋敷は大盛況で終了した。みんなを更衣室に入れて自分も着替える。コスプレは借りた人はそれぞれの担任に返す事になってる。あまりにも人数が多いんで。着替えたら今度は片付け、教室を元に戻す。みんなテンション上がってるのでドンドン作業が進んでる。あっという間に終わりホームルームの時間も余裕で迎えられた。
私は持て余すこの衣装。誰に返すの? 榊のクラスのホームルームを待って榊をつかまえる。
「ねえ、これって先生行き? 榊まだ持っとくの?」
「お前は飛びつきすぎだから洗濯した方がいいんじゃないか?」
確かに汗だくだった。
「あ、だね」
「よう! 隆とこはまだか?」
橘が遠くの柏木のクラスを伺ってる。
「あ、まだじゃない?」
って、ことで今日も一緒に帰る私達。もしかして、榊の私と付き合ってると宣言したのが受け入れられないのはこのせい?
*
ピンポーン
もう寒いよ! 寝ちゃったのかな?
ピンポーン
寒いよお。お願い出て!
ピンポーン
ガチャ
ホッとため息が漏れる。助かった!
「お前何時だと思っているんだよ。って、それ!」
「お願い寒いよ。中に入れて!」
「ちょ、マジでか?」
「お願い!」
榊は体をドアに寄せてドアを大きく開いてくれたんで承諾とみなして榊の家にもう一度上がりこむ私。
「香澄それはマズイって!」
「ソファー借りるだけだから」
と言いながらどんどん入りこんでソファーに布団と毛布を置く。そう昼間のお化け屋敷のイベントのお化けを思い出して寝れなくなった。怖すぎて一人では部屋にいれなくなった私はお布団持参で榊の家を訪ねて来た。今はもう十一時をまわってる。来るのに迷っていたけど、これ以上遅くだと榊が眠ってる可能性が高いから決心して来たんだ。
「マジでか」
榊は普段はここでも制服のままでいる。私も。夏休みと冬休みは普段着だったんだけど、私も家着なら榊も家着。なんか新鮮だけど、榊はさらに顔を赤くして困ってる。いつもは人を家に引き込むくせに。
「榊が連れ回すからだよ! あ、部屋のドアは閉めないでね。じゃあ、お休み!」
そう言いながら私はソファーに置いた布団をかけてソファーに横になる。寝たもの勝ち!
「あーもー! お前は! わかった電気は消していいのか?」
「豆球で!」
怖いよ真っ暗は。
「じゃあ、お休み!」
何かを吹っ切るように榊は電気を豆球にして自分の部屋に入って行った。
「お休み」
……ダメだ。怖い。毛布と布団を持って榊の部屋に入る。そっと、眠っている榊の横に忍び寄りベットにもたれるようにして毛布と布団を体に巻きつける。榊の手が見えるようにベットに頭を乗せる。榊の手を握る。やっとこれで寝れそう。
*
「うわあ!」
ん? 何の叫び声?
「お前はなんでここにいるんだよ!」
か、体が痛い! 座って眠ったから痛いよ体が。
体も動かせないし、頭も……首が痛……ああ、そうだった!
「ごめん。怖くなってソファーじゃ寝れなくて」
「香澄わかってる?」
「ん?」
何だろう寝起きの榊は可愛いな。すごい慌ててるし顔も赤いし。
「ん? って……とりあえず寝れたのか?」
「うん。多分」
「多分って」
何せ我慢できるまで我慢して榊のとこに来たし、ソファーにも頑張って寝ようと試みたんだから。結構。
でも、上手く布団に包まってなかったみたいで寒いし眠いし体が痛い。
誘惑には勝てない! 榊の布団に入って行く私。あったかい。榊の温もりとベットというちゃんとした寝具の寝心地。
「おわ! 香澄、いい加減にしろよ! 遊んでるのか?」
なんか立場がいつもと違うな。榊が焦りまくって、体も私に当たらないように必死でよけてる。
「違う。寒いし眠いし体が痛いの」
榊はすぐに私の手を握って確認してる。
「バカかよ。こんなになるまでこんなとこで寝て」
と言いながら体は離れてるままだけど腕を私に巻いてくれる。
「あったかい。お休み」
今日は日曜日で学校は休み。いつもは榊が呼びに来たらここに来る。たまに友達と遊んでいるみたいだけど、橘なのか柏木なのかはわからない。三人仲いいからな。
あったかい榊の腕の安心感からか私はすぐに眠りについた。
*
「香澄! 起きろ!」
う。そんなに揺すぶらないで!
あったかい布団。そうだった榊の布団に強引に入ったんだった。あの時は寒さと眠さがベットを求めていたけど、今は違う。完全にいつもの私に戻ってる。どうしよう。とりあえず起きよう。揺すぶられすぎだし。
「お、おはよう榊」
「香澄、今もう昼間なんだけど」
「嘘! ごめん。寝すぎた!」
昨日の夜はよほど眠ってなかったみたい。相当昨日自分と戦った。結局負けたんだけど。しかも榊のベットにまで入って完敗だね。
「寝すぎだよ」
あれ、榊。着替えてるのに。腕はそのままだ。布団にすら入ってないし。
「ごめん。あの、帰るね」
「じゃあ、着替えたら昼ごはん食べに来いよ」
榊は腕を外してベットから降りる。
「あ、うん」
私もベットから出て布団を畳んで持てる大きさにする。
「じゃあ、あとで」
と、榊に鍵とドアを開けてもらって家に入る。ベットに布団を置いてひと呼吸。榊ってわからない。手を出さないどころかキスもない。最初の頃のあれはなんだったの?
いや、それを期待して行ったんじゃあ、もちろんないんだけどね。
*
「お前今晩は来るなよ!」
「あーもー! 思い出させないで! なんか楽しいことしよ!」
「じゃあ、はい」
ってまたゲームのコントローラーなんだけど。他に楽しいことはないの?
*
学校一の行事だった音楽祭の保護者の来客数を遥かに上回る大成功で生徒会企画の全校あげてのお化け屋敷は終了した。
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