第32話 コアラ
「いっぱい来るかな?」
「さあな」
え? 他人事? 相変わらず食えない奴だよ。
あれ? この衣装……どれだけ前から企画してたんだ! 橘と柏木も! 芝居してた?
お化け屋敷のスタート時間、間際に橘と柏木が戻ってきた。まだ開始時間じゃないのでドアは開けていないが、なんだか列が出来てるよ。保護者らしき人からあれはよその高校生か? 中学生か? まで並んでる。
「もう開けても大丈夫だよ」
「みんな張り切って待ってるぜ。なんかすごい本格的なのから漫画みたいなのまであるんだけど」
二人とも楽しそう。
「ちょっと来客が多そうだから瞬も隆もしばらく受付に居てくれ」
「ああ」
「うん」
だよね。めっちゃ多そうだよ。
「香澄開けてきて」
「はーい」
私はドアを開ける。
受付開始。どうやら兄弟まで見に来てるらしい。人数の欄が三とか四とかまである。みんな家でどれだけ宣伝したんだろう。さっきの着替えも張り切ってたからな。さっきの中高生は兄弟だったのか。
私は叔父や叔母にこのことは言ってなかった。そして、言わなくて良かった。言えば張り切って絶対に来る。この格好を見られたら後で小言の山だよ。メイド服の露出増えてるし!
列が途切れたので柏木と橘は休憩&視察に、どのクラスも交代制で見て回るようにしたみたい。やっぱりよそのクラスも見たいもんね。
それにしても良く入るなあ。高校生の保護者なら来ないかと思ったのに。大盛況だね。みんな喜んでるだろうな。
ここからは中の状態わからないけど、なんだか騒がしい音は漏れ聞こえて来る。
「大盛況だね」
「そうだな。予想以上だ」
榊も予想してなかったの!
次々に来客が来るのでなかなか話できないぐらい、来客数がどんどんあがっていくよ。
結構欄が埋まって来てる半分かな。すごいな。そろそろ帰って行く人も出てきた頃に柏木と橘が来た。
「おう! 交代! 飯も食っとけよ!」
「中の人すごいよ。お化けの数より多いんじゃない?」
「だろうね。半分ぐらい来てるもん」
「お化けのままみんな見学もしてるから予想外のとこから出てくるから面白い!」
そう、更衣室は最後まで閉めっぱなしなのでお化けのままトイレにも食堂にもいるんだろうな。
「じゃあ、また後でな」
榊は私を連れて中に入ってく。実はお化けの苦手な私。クラスメイトのお化けの扮装はそんなに怖くなかったんだけどいざとなると怖いよ! 暗いしなんかそういう雰囲気が出ている。みんな相当力入ってる。
怖い私は榊の私の腕を握る手では満足出来ず自分から榊の腕に絡みつく。
確かにお化けよりも見に来てる人の方が多そう。廊下には人だらけ。こんなに来るなら学年かクラスの奇数と偶然で時間を分ければ良かったかも。
でも、怖い。そこからって急に休憩中なのかワザとなのか出てくるからビクってする。人も多いし暑くなった私は上着を脱いで持ってるんだけど、それでも汗かくよ。違う汗? 冷や汗?
もう完全に榊の腕に絡まってる私。一年生から二年生そして三年生と見て回り生徒会室でお昼を食べる為に向かう。やっとお化け地帯を抜けたなんて気を抜くとひょっこりお化けのまま出てくる。向こうは多分ただの休憩で脅かそうって気持ちじゃないのにいちいちビクってする私。
「香澄、くっつき過ぎ! もうこれから先はお化け出ないって」
「そうだよね。あーもー、疲れた」
「あんだけビクつけば疲れるだろ」
笑うな榊! 苦手なんだから!
「さあ、昼食べて瞬達と交代するぞ」
「うん。きゃあ!」
って! 何故いるんだここに。あまりにもびっくりして榊に飛びついてしまった。ゾンビもどきで、明るいし今見たら怖くないんだけど、油断してて突然だったから。
「お前は……」
「ごめん。あの人が多いけどあとどれくらい来るか生徒会室に聞きにきたんだけど」
受付に行け! ゾンビ!
「今半分ぐらいだけど全員の保護者が来るわけじゃないからお昼を過ぎれば減るんじゃないか」
「わかった。ありがとう。佐久間ごめんね」
「ううん」
誰だろう? 元の顔わからないよ。クラスメイトか?
「お前は飛びついてくるなよ。びっくりするだろ」
「ごめん」
ってか、榊も何度も私を押し倒したりしたくせに!
「交代遅くなってごめんな。香澄がもう怖がりまくって、それがもう酷くって」
「酷いってなによ!」
「じゃあ、もう一回一人で行ってみろ!」
「ごめんなさい」
橘と柏木、爆笑してる。こんなに怖がってるのは私だけ?
「いや、みんな喜んでるよ。怖がってくれて」
柏木、笑い過ぎて涙ぐんだ目でフォローしてもフォローになってない!
午後もそれなりに人が入ったが、ちらほらになったので怖さが増してるんだろうな。休憩も増えてるのか恐怖は倍増だよ。もう一回見てまわるなんて出来ないと思ってるのにまた休憩中に各クラスを見て回る榊。生徒会が企画したからそうなんだけどね。仕事なんだけどね。
怖さが増してるんだろうな。っていう私の予想は倍増なんてもんじゃなくって半泣きです。腕では満足出来ず榊にすがりついてる。怖いよー。みんな凝りすぎだ! さっきと変わってるし、交代でメンバーが代わってるだけなんだろうけど、予想をとことん裏切るお化け屋敷なんだけど。
食堂で休憩。
そこにもお化けのままの生徒がいるけどさすがにここは大丈夫。明るいしお化けの生徒が来るってわかってるから。
「香澄怖がり方の酷さが増してるぞ。俺は木か? お前はコアラか?」
「ごめん。だって人が減ってるし、さっきとお化けが代わってるんだもん」
「そんなことわかってただろう?」
榊なんでか赤い顔で呆れ顔。
「わかっててもダメなものはダメなの。あー、なんか受付するより疲れた!」
「俺も。お前よく一人暮らししてるなそれで」
榊さらに呆れてる。
「それ言わないで! 今日寝れるかな?」
「マジでか?」
「ううっ」
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