第11話 事実と変化
今日の朝は榊に会わなかった。
門に立ってます生徒会長。それって生徒会長選挙とかで立つもんじゃないの?
そして、……知らなかった。クラス違うから、こんなに榊がモテてるなんて。昨日の発言は伊達ではなかった。朝から女子が騒いでるよ。迷惑だよ、立ってるの。っていうか、なんか嫌だな。
さっさと通り過ぎてしまおう。と、目に付く朝練してる陸上部。陸上部の朝練って珍しい。あ、なんか大会出ますって垂れ幕が目の前にあるし。そこにさっき聞いた黄色い声が再び聞こえてくる。見るとあれって橘君だよね。一応大会前はクラブに出るのかな? やっぱり予想通りのモテ男ぶりだな。
「おはよう。佐久間さん」
あ、柏木君だな。って振り返ると。誰? 想像以上の美形だった。柏木君。メガネと髪型で変わりすぎてわかんないよ、多分みんな。
「おはよう。メガネ諦めたの?」
「ああ、瞬に運動出来るってバラして、クラブたらい回しにされたくなかったらって脅されて」
橘君、自分がクラブたらい回しにされてるからね。
「運動も出来ないフリしてたの?」
「普通ぐらいにね。体育の評価は落としたくないしね」
運動苦手な私には羨ましい話なんだけど……でもわかった。なぜ、橘君が脅してまで柏木君のメガネを取らせたか。橘君と柏木君めちゃくちゃ似てる。タイプ的に。だから、自分に向かってきてる女子の好意を柏木君に分けようとしてるな。橘君、気にしてるじゃない十分。
それにしても柏木君って綺麗な顔、可愛い!
メガネしてた頃のギャップで余計にそれが目立ちそう。
「ねえ、生徒会長って門に立つものなの?」
転校してきた私にはわからない。榊は変わってるから榊の生徒会長の理想像でって可能性も十分にある。
「ああ、あれね。あれやりたくなくて毎年生徒会長の立候補ないんだって。榊はそのこと知らなかったんじゃないかな?」
「え? なんで?」
「榊、転校生だから」
「へ?」
なんですって! あんな偉そうなのに?
「二年になって転校してきたんだよ。その頃にはもう生徒会長は引退してるからね。だから、生徒会長が毎朝門に立ってるの知らなかったんじゃない?」
「二年になってって一ヶ月前だよね」
「そうだね」
ああ、柏木君その笑顔が眩しい。じゃない! 榊はよくそれで生徒会長になんか立候補する……って私の言葉でか。でもまあケンカしてるよりいいか。
「っていうか詳しいね」
あれ? 生徒会長が私かどうか確認してたよね。
「ああ、昨日瞬に聞いたんだ。瞬は榊と同じクラスだから」
つい昨日情報だったのね。私と大差ないか。
って私は榊について知らなさ過ぎでしょ? ずっと榊と一緒にいるのに。
面白そうなんで柏木君のクラスの様子を見についてってみる。隣のクラスだし。
「じゃあ、また放課後に、佐久間さん」
うわ、柏木君もうキャラが前とは全然違う。
「じゃあ、柏木君」
と、ことさらに柏木君を大きく言ってみた。
彼が席に座る。クラスは一瞬静まり返る。ああ、彼のこと明らかに批判して笑ってた子たち、困り果てている様子で柏木君を見ている。なんとかみんな正常を保ち、男子が柏木君に話かけてる。この変化は黙ってはいられないんだろう。
面白いって、考えてみたら私もだった。榊! 見てたの? 楽しんでたの? 橘君の目的がわかったから余計に榊の計略を考えてみる。……わからない。生徒会の勧誘に役立ったとは思えないし。
ち、近い。隣の男子。寝てた日には教科書が落ちるってぐらいに机まで離してたのに、今はちゃんとくっついてるのはもちろんだけど椅子の位置が目一杯こっちにある。そこまで近いと嫌なんだけど。まあ、寝てた日には頭が乗る勢いでそっちに行ってたんだから嫌がりすぎもなんなんだけど。
まだなのかな教科書。早く一人の席がいい。迷惑かけてるのは私なんだけど。
お昼の時間。さて、今日まで私は一人でお昼ご飯を食べていた。どう来るのか、誰が誘うんだろう?
私を誘ったのは生徒会長でした。なんなのよ。橘君と一緒に誘いに来た。話があるんだ! って絶対ないね。
そのまま柏木君のところへ。うわー。教室の雰囲気が空気が微妙だ。
「おう! 柏木。メガネを取ったのか! 生徒会室行くぞ。昨日の話なんだが」
席をすぐに立ってお弁当を持った柏木君。出口のすぐそこの席なんでガンガン榊に連れていかれます。
なんか後ろがざわついてるし。メガネの件もあっさり流すし、本当に読めない男だよ、榊。
私の予感は的中した。たいした生徒会っぽい話ないんですが。食べ終わったら?
食べ終わっても一緒だった。何なんなの親睦深める為? すでに柏木君と橘君はめちゃくちゃ仲良しだし、榊と私も……まあね、いろいろあったし。そこまで親睦が必要? って昼休みが終わって教室へ。
一応の確認で橘君は朝練のみの参加になってるんで生徒会には来れるとのこと。……橘君ってもしかして、練習嫌い? 生徒会にいれば練習をサボれる口実になるから入ったんじゃ。やっぱり策士だ。
とっても近い隣の男子。最後は体育でなんとかなった。早く私に教科書を! 先生!
放課後すぐには生徒会室に向かわずになんとなく柏木君の教室を覗く。うわ、昨日散々いってた女子の態度があからさまに違ってる。帰り支度をしている柏木君に話かけてるよ。昨日、彼を笑っててよく言えるな。その根性は凄い。
「あ、佐久間さん。今から行くの?」
「うん」
柏木君は私を見つけて、声をかけて来た子達の横を通り過ぎる。
「じゃあ、一緒に行こうか」
「あ、うん」
柏木君は教室を出て私と生徒会室に向かう。もう後ろからは笑い声が聞こえない。
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