3年4組

「加奈、保健の教科書かして」


4組は私達の3組と違って、休み時間でもみんなきっちり座っている。おとなしい子が多いからか、はたまた担任が五分前行動に厳しい上川先生だからだろうか。

加奈とは小学校が一緒で、昔から仲良くしている。中学になってクラスは離れたけど、よく一緒に下校したりもする。

そして加奈は、私の羽根のことを知っている、唯一の友人だ。


「保健あったっけ…あーあったあった」


加奈は黄緑のリュックの中から保健の教科書を取り出した。はずみで大きなストラップが揺れる。赤と黄色と緑の球体に、太めの毛がついたような形容しがたい形。ちょっともさもさしてる感じがイソギンチャクみたいでかわいい。


「ありがとー」


少し端のよれた教科書を受け取る。加奈は基本的に物持ちはいいけど、教科書だけはあちこち折れ曲がったりしている。別に勉強をたくさんしているからとかではないらしい。ただリュックに入れてるだけなのに、自然に折れるんだそうだ。


「五分前ーー早く教室戻れーー」


と上川先生。私は加奈に向かって手をふって、教室に戻った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る