車中

「俺のほかにも、羽根がある人あと3人いるんだ」


 唐突に大和さんがそう言った。

 えっ!?と声を上げて身を乗り出す。

 シートベルトに阻まれてつんのめったけど。

 慌てた私を見て二人が笑った。


「何だ大和、言ってなかったのかよ」

「時間なかったからさ。あんまり話してないんだ。あ、でもラインは交換したよ」


 そう大和さん。

 興味津々、といった様子の私には、チャーリーさんがこたえてくれた。


「さっき話したインド人――俺にチャーリーって渾名付けたやつな。そいつがそうだ。あとは、音楽家の男と若い女が一人」


 インド人で羽根があってチャーリーって渾名をつけてくる人か。

 なんかキャラ濃くない?

 音楽家の男の人っていうのも気になる。もちろん若い女の人も。

 同性がいると、何かちょっと気分的に楽だ。


「みんなここの教会の教会員だよ。今週の日曜、暇だったら来てみない?」


 大和さんは軽く言った。

 え、教会ってそんなに簡単に足を踏み入れていいとこなの…?

 私はキリスト教にはまったくといっていいほど触れたことがない。クリスマスはプレゼントがもらえてイルミネーションで盛り上がるイベントだし、その数日後には初詣に行くような普通の日本国民だ。

 キリスト教だけじゃなく、宗教に関して知っていることといえば、イスラム教はメッカに向かって一日に何度もお祈りするとか、ヒンドゥー教だと牛を食べちゃいけないとか、そういう授業で習ったことくらい。


「いいんですか?私教会って行ったことないし、よくわかんないんですけど」

「構わねーよ。寧ろ歓迎だ。キリスト教は基本的にいろんなところオープンだからな…厳しい規律もねえし。なかなか親しみやすいと思うぞ」


 そういうものなのか。


「俺も最初はちょっと戸惑ったけどね。でも、行ってみたら色々驚いたよ。想像してたのと全然違った」


 楽しそうに大和さん。

 まあ、羽根のある人たちには会いたい。


 教会、か。


 とりあえず、行くだけ行ってみようか。

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