第34話 塾の経営を始めて1
話はそれたが、私は夢にまでみた教育の仕事を手に入れることが出来た。
私はオックスフォード学園の岩佐社長に300万円を支払い、川崎市宮前区菅生にある『オックスフォード学園 宮前校』を手に入れた。契約当日、宮前校の鍵を渡され、岩佐社長と当時そこで講師をしていたS先生と共に宮前校まで連れて行ってもらった。
「ここが、これから石原さんの塾ですよ。」そう言われたその塾は、教室が2つあり、黒板と机が並んでいて学校のような様相を醸し出していた。
「ちょっと教壇に立ってみたらどうですか?」
岩佐社長に促され、私は教壇に立ってみた。嬉しかった。今でもあの感動は忘れていない。(ここがこれから俺の塾なんだ・・・)そう思うと自然と笑みがこぼれてしまった。
「今日これから授業がありますので、S先生の授業を見学して、勉強して下さい。明日から早速石原さんに教壇に立って頂きます。」
そう言われた。私は嬉しさの反面ドキッとした。果たして私に教える事が出来るのか・・・急に不安になったからである。それから、この塾に在籍している生徒名簿を見せられた。
その当時中3の子が2人、中2の子が1人、中1の子が3人、小6の子が3人、小5の子が1人の計10人在籍していた。
「まだまだ人数は少ないですが、ここの地域には幸い塾はそんなにないので、募集すればまだまだ集まりますよ。」そう岩佐社長は付け加えた。
それから私は、10人いるその生徒の名前を頭に叩き込み、明日からの授業に備えるべく、S先生の授業を見学した。
私はS先生の授業が始まる前に自己紹介をし、「明日から君たちを教える石原といいます。よろしくお願いします。」と簡単な挨拶をした。そしてS先生の授業は滞りなく終了した。
そのあと岩佐社長から、講師について教えられた。宮前校は国語・数学・英語の3科目受講で、国語は大学生のアルバイト、英語は留学経験のある50代の女性、そして数学を私が担当すると言われた。そして最後に、「これからは、ここは石原さんの塾ですから、本部のチラシや教材など決まっているものは変えられませんが、その他は自由に石原さんの考えで行って頂いて構いませんよ。」と付け加えられた。そして私は次の日からオックスフォード学園 宮前校で授業するようになった。
授業初日、流石に少し緊張したが、生徒たちは皆素直ないい子達ばかりだったので、楽しく授業が出来た。そんな感じで1週間が過ぎた頃、岩佐社長から電話があった。
「石原さんにお願いがあるのですが、明日本部に来て頂けませんか?」
「大丈夫です。それでは明日10時頃そちらにお伺いします。」
そんなやり取りで電話を切った。
次の日、本部へ行くと、岩佐社長は突然こんな提案をしてきた。
「中央林間校で事務員の欠員が出てしまって、午前10時頃から宮前校が始まる前の午後3時頃まで中央林間校で事務員として働いてもらえませんか?もちろんその分のお給料は払いますので・・・」そう言われた。私はビックリしたが、事務経験もあるし、なにより、塾の事がもっと知りたかったので、その場ですぐにOKの返事をした。するとその足で、中央林間校に行くように言われたので、私はそちらに向かった。
そこには二人の女性がいた。1人は私と同じようにこの中央林間校を大金を出して買った女性、もう一人は単純に事務員としてパートで働いている女性だった。この事務員の女性は結構長く勤めているらしく、この中央林間校について教えてくれた。中央林間校は今まで岩佐社長が塾長を兼任していた場所で、今まではこの中央林間校が本部だったとのことだった。大和校はつい最近出来たばかりで、それを機に本部を大和校に移したとの事だった。だからこの中央林間校にはオックスフォード学園の寺務書類が全てが保管されていると説明された。つまり、ここは本部ではないけれど、本部のような仕事をし、各校のロイヤリティーの計算や教材発注手配、チラシやポスターの発注から新聞折込の手配などを全て執り行う場所と説明された。そんな説明のあと、私が担当する仕事を言われた。
私は、各校のチラシの制作・発注及び新聞広告・折込チラシの手配の担当になった。
その頃にはWindowsも発売されていて、コンピューターもグッと扱いやすくなり、私はコンピュータでチラシを作成したりポスターを作ったりしていた。結構、岩佐社長にダメだしされながら・・・
それから私は昼間は中央林間、夜は宮前校と忙しい日々を過ごしていたが、とても楽しく充実した日を送っていた。
悪魔の魔の手が忍び寄ってるとも知らずに・・・
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