第11話 中学校時代①ー4(処女作そして音楽の道へ)
前述したように、夏休みはほとんどギターの練習に費やしていたが、夏休みの宿題も沢山でていたので、その時間もちゃんと確保していた。もともとせっかちな性格の私は、宿題をもらったらすぐに終わらせなければ気が済まないタイプで、夏休みの宿題は7月の終わりころには全て終わらせていた。この前の定期テストで2位に急上昇したことと、私が宿題を全て終わらせているという噂が同級生の中で走り出し、私の家には連日誰かが宿題を教えてもらうために来るようになっていた。クラスで一度も話した事が無いような奴や他のクラスの名前も知らないような人でも私の知り合いと一緒にやって来ては宿題を教わって帰る始末だった。
そんな中で私の人生の転機ともいうべき宿題が出されていた。それは音楽の宿題である。
通常はレコード鑑賞(今は音楽鑑賞という。)だけが出されるパターンが多いと思うが、その時の音楽担当の森川先生は作曲するという宿題も一緒に出してきた。今思えば、中1の音楽を何も知らない子たちに作曲しろなんて、なんて無謀な先生なんだろうと思うが、これが私にとっては思いもよらない方向に動き出した。
私は、作曲を始めるとその楽しさにわくわく感が止まらなくなった。
そして作曲のみの宿題にも関わらず、その曲に歌詞までご丁寧に付けて提出した。
後日、私は森川先生に音楽室へ来るように言われた。
森川先生が言ってきた。
「石原は音楽の勉強をどっかでしていたのか?」
「いいえ。全部見よう見まねの独学です。」
「本当か!」
そう言って森川先生は私に、
「君には音楽の才能がある。吹奏楽部に来てキチンと音楽の勉強をして見ないか?」
そう誘われた。
多分、吹奏楽部には男子がいないので、男子を勧誘するためのお世辞だとは思うが、初めて誰かに認めてもらった事が私にはすごく嬉しい事だった。
「今、何の部活に入っているんだ?」
「テニス部です。」
「・・・テニスは好きか?」
そう言われ、すぐに返事ができなかった。もともと東が入るから入った部活だった。別に好きとか嫌いとかの感情は無かった。
「テニス部を辞めたくないならしょうがないけど、一度真剣に考えてごらん。」
「はい。失礼します。」
そう言い残し、音楽室を後にした。私の答えはもうこのときすでに決まっていた。
次の日、私はテニス部を辞め、吹奏楽部に転部した。東に事情を話すと、
「やりたい事が見つかって良かったじゃん。」
と本当に喜んでくれた。
ところで、その夏休みに提出した私の処女作の曲は、森川先生の提案でその年の合唱コンクールのクラスの自由曲にしようという話が持ち上がった。しかし、どうしても恥ずかしかった私は、「絶対いやです。」とかたくなに拒否をし、結局、別の曲を歌うことになったのである。今は、ちょっともったいない事をしたなと後悔している。
あの時書いた曲、タイトルは『夢』。その一部を書いておこう。
(今読んでもクサ過ぎてやっぱり恥ずかしい・・・まぁー中1の頃のおバカな自分が蘇ってくる感じはあるかも・・・笑)
「夢」
君の夢は何かな
僕には夢がまだない
青空の向こうに広がる地平線
どこまでも続く大地
きっとそこには僕らの夢が
いくせんもあり
今か今かと待ちくたびれている
夢の力を信じて
走り続けよういつまでも
君の夢はどこかな
僕には夢が見えない
大空を飛ぶ鳥たちのさえずりが
どこまでも遠く響く
きっとそこには夢のカケラが
いくつぶもあり
一つ一つに思いを込めている
夢の力は偉大さ
力をもらおういつまでも
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