第5話 小学校時代②ー2(転校そして教師からの暴力→不登校)


私が転入した学校は、新居から直線で100mくらいのところにある川崎市立S小学校という所だった。商店街に隣接していて、人通りも多く、決してのどかな場所では無かった。当然、今までと同じとは行かず、私立ではなく公立の小学校に転入する事になったのである。それでも私は、期待と不安を膨らませていた。

九月一日、転入初日。・・・

私は6年1組、中島先生のクラスに入る事になった。朝、中島先生に連れられ、教室のドアを開ける・・席に座っている全員が私を見つめた。私はドキドキしていた。

先生が言う。「今日は転校生がいる。石原君、自己紹介しなさい。」

私はドキドキしながら、「石原です。相模原から来ました。よろしくお願いします。」

と、簡単な挨拶をした。

そして席を指定され、ゆっくりとその席まで歩き、着席した。隣に座っていた内藤さんという女の子が「よろしくね。」と言ってきたので私も「よろしく。」と返した。


やはり、転校生とは人気があるものである。休み時間になると、私の机はクラス全員に囲まれ、質問攻めにあっていた。前の学校の事、なんで転校してきたのか、好きなスポーツ、好きな音楽・・・・色々と聞かれた。私は、このクラスなら、楽しくやっていけれるだろうと感じていた。しかし、それは間違いだった事にすぐに気付かされた。


転校生の人気なんてそう長くは続かない。1週間もすれば、普通の日常に戻る。そんなのは当たり前だ。私も例外ではなく、私の人気もすぐに鎮静化され、クラスは修学旅行の話題でもちきりになった。そう。あと1ヶ月くらいで修学旅行があると聞かされたのである。

ちょっと待って!まだクラスメートの名前すら良く知らないのに、修学旅行に行って、何の意味があるんだろう?私は修学旅行には行きたくなかった。私は、中島先生にその旨を伝えた。すると中島先生は「絶対に来いよ。ずる休みは許さないからな。」と強く否定された。

その時は、中島先生は私の事を考えてそう言ってくれてるんだと思っていたが、このあと、私と中島先生の間には大きな確執が生まれる事になった。


それから、しばらくして、修学旅行があった。私は、渋々修学旅行に参加した。

でも、案の定、行かなければ良かったと思った。仲の良い友達がいるわけでもなく、信頼できる人がいるわけでもなく、私は事あるごとに一人でポツンといた。気を使って、何人かのクラスメートが話しかけて来てはくれるが、どこかぎこちない会話で終了する。絶対来いよと言っていた中島先生も私が一人でポツンといる事に気がつきながらも、話しかけて来てくれる訳でもなく、放置されていた。そんな中で私はとにかくこの地獄が早く終わってくれることを考えながらずっといた。だから、小学校の修学旅行の思い出は一つもない。記憶に何一つ残っていないのである。私にとって小学校の修学旅行は苦痛以外の何物でもなかった。

あとから知った事なのだが、中島先生が私に「絶対来いよ。」と言ったのは、自分のためだった。自分のクラスから、修学旅行に不参加の生徒が出ると自分の査定が下がるからという事だった。教師の風上にも置けない、最低の人間だった。


私がこの事を知ったのは卒業式のちょっと前ぐらいだったが、多分もうこの時に、直感でこの先生は信用できないと感じていたんだと思う。修学旅行から戻ってきた次の週から、私は中島(当時の気持ち、呼び名で再現するので敬称は省略させてもらう。)に反抗的な態度をとるようになった。まず手始めに、言葉遣いが敬語では無くなった。そして、奴の話を聞く時はポケットに手を入れて、ふてくされた態度で聞くようになった。すると中島は私を人気のない所に呼び出し、顔面を思いっきりひっぱたき、後頭部を殴り、お腹を蹴り飛ばしてきた。それでも私は涙を見せることなく、中島を睨みつけると、「なんだその目は!」といい、さらにボコボコに殴られた。今でこそ体罰という言葉は浸透しているが、当時、先生が暴力をふるうのは愛だと勘違いされている風潮もあった。だから、その時の私は、教育委員会に訴えるという事は頭になく、ただただ、中島の暴力に耐えるしかなかった。


そして、中島の暴力はエスカレートしていった。

ある日、クラスで男子二人がふざけていて教室に置いてある花瓶にあたり、花瓶が落下して割れるという事件が発生した。私もその一部始終を見ていた。しばらくして、中島が教室に入ってきて、割れた花瓶を発見すると、

「誰がやったんだ?正直に名乗り出ろ!」と言ってからすぐに私の方を見て、

「石原。お前がやったんだな。」

と決めつけてきた。

私は、「違うよ!」と言い返したが、私が弁明する間もなく、中島に手を引っ張られ連れていかれた。

連れていかれた先は誰もいない体育館だった。そこで中島は私を殴る蹴るをし、最後に突然私のズボンとパンツを下半身が見えるか見えないかくらいまで下げて、

「そのまましばらく立ってろ!」

と言い出て行った。屈辱的な時間だった。私はそんな事に従うはずもなく、すぐにズボンを上げ、そのまま、何も持たず、家に帰った。

そして、私は次の日から、学校に行かなくなった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る