魔法☆少女湖城ちゃん
西野 内斗
壊滅☆技量プロローグ
「うぅ……あ、あぁ……」
空で唸る雲が星の瞬きを隠し、吸い込む空気すら水気に満ちて肌を打つ雨が痛い。ここ最近では珍しかった猛烈な雨が、街を白く煙らせていた。
「くそう、こんな所で……」
そんな天気の中、黒いスーツを身に纏った一人の美しい女性が道に倒れていた。
スーツは所々破けていて、そこから覗く白い肌には赤みが滲んでいる。吐き出される息は次第に脆弱なものになっていき、それはまるで雨の中に溶けていくようであった。
「もう、ダメか……」
周りの水たまりを赤い色に変えていきながら、女性は静かに目を閉じた。
が、伸ばした右手に新しい感覚が生まれる。見やると、小さな黒猫が手をペロペロと舐めているようだった。
それに目を細めて、優しげな笑みを作った女性は、猫の頬を撫でて、その瞬間何かの糸が切れたかのように動かなくなった。
残された猫は、前足で数度、顔を洗った後にとてとてとその場を去る。
「ふ、これは運が良かったな」
その去り際、雨に混ぜるように猫がそう言葉を溢していった。
魔法☆少女湖城ちゃん 西野 内斗 @MX-WELL
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