第4話 千年の戦

 その時、桃太郎大通りから祭りの音楽が聞こえてきた。

 うらじゃの原曲に続いて、楽しげな「うらじゃ音頭」も聞こえてくる。


 百襲媛は霞み始めた温羅を見つめながら、祭り囃子に身を委ねた。


 大和の武の力も、歴代巫女最強といわれた自分の霊力さえも、この男の器の前にやんわりと受け止められただけだったと感じていた。


 目の前の戦いしか見えてなかった自分の浅はかさ、というより、温羅の深謀遠慮に舌を巻くしかなかった。


 温羅が仕掛けた千年の戦に、百襲媛や吉備津彦らも絡めてとられ、後のヤマトタケルの悲劇が生まれることになる。


 それはまた、別の話である。

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