S2-10「経緯2」
――まあそんなこんなで、私はダーネスが逃げ込んだ異世界を突き止めて、そこへ降り立つことに成功したわけよ。そして、私はダーネスを倒すために協力してくれる人を探そうと思った。勇者とはいかなくても相応の実力を身に着けた戦士とか、名高い魔道師とかが居るもんだと、居てくれるものだと高を括ってた。……でも、現実は違った。この世界には
――で、魔法を使える人が居ないってわかった私は、落胆しつつも何もしないわけにはいかないからその辺を観k……この世界を調査してまわったのよ。そして、私はこの世界に着いた時降り立った国、あとでわかったけどその国はアメリカという名前だった。ある日、その国のとある町で、骨董市が開かれてたの。特に目的もなくうろうろしてたら、あるエリアに人だかりができてて、何かと思ってそれを見に行ったの。そこでは日本の刀や美術品なんかが売られていたんだけど、私は何となくそこにあった刀を手に取って、鞘から少しだけ抜いてその刀身を見てみた。……それを見た瞬間驚いて思わず変な声出しちゃったわ。見た目が綺麗だってのもあったけど、何より武器そのものとしての性能がとても優秀なものだって言うのが見てわかった。その時思いついたの。魔力そのものが作り出せなくても、物を媒介にして別の物を魔力に変換すればいいんじゃないか。それを武器の中に直接組み込んでしまえばいいんじゃないかって。
――私はこの世界の武器、よくある近接武器から現代の銃火器に至るまで様々な物を調べて回ってみたわ。そして、
「そして私は、
「…………」
言われて手の中にある非戦闘状態の桜花を見つめる鈴江。セインはその様子をちらりと一瞥すると言葉をつづけた。
――ダーネスへの対抗手段を何とか確立させた私はアイツの居場所を探ることにした。……結果として、その場所はすぐに分かった。極東の日本という国で、どう考えても魔力によるものとしか思えないことが起こっているという情報を手に入れた。そうして私はこの国へとやってきて、私はその現象と対面することができた。
「……高音ちゃん。あなたが起こした、魔力によって隔離された空間に人を引きずり込む、神隠しとでも言うべき現象にね」
「…………」
セインに言われ、高音は思わずうつむき、黙り込んでしまった。
「……ごめんなさい。別にあなたを非難してるわけじゃないのよ。ただ、どうしてあなたがダーネスに唆されたのか、それを知ってもらうために一応確認にね」
「…………」
セインは柔らかい声で言った後、高音が顔を上げるまで待ち、その顔に微笑みかけると再び口を開いた。
「ダーネスに接触した人には一つの共通点があったわ。それは、
「……ん? ちょっとまて、お前さっきこの世界に魔力は存在しないって言ってなかったか?」
待ったをかける形で鈴江が疑問を呈した。
「……正確には、
「で、でも私にそんな力があるなんて……」
高音は動揺を隠せぬ様子で言った。
「分からなくて当然よ。無いのが普通の世界で、使い方なんか教えてもらえないんだから。……それこそがあいつにとってこれ以上ない良条件だったんでしょうけど」
「どういうことだ?」
「ダーネスはこの子みたいな
先ほどとは打って変わって声色に険しさが増す。
「鈴江、あなたも覚えてない? あの夜にこの子の空間で、あの化け物が言ってたこと」
「言ってたこと……あっ」
『そシテ余った魔力を
「献上……?」
「そう、献上。……たぶんだけどアイツは多くの魔力を集めて何かをしようとしているんでしょうね」
「元の世界? に帰るためじゃないんですか?」
疑問符交じりの声を上げる高音にセインは首を横に振る。
「それにしては少し時間がかかりすぎてる。……私が死んでから、つまりダーネスがこの世界へ逃げ込んでから、裕に百年以上の時間が経ってる。それだけの時間があってアイツともあろうものが次元一つ飛び越えられるだけの魔力が集められないとは考えられないわ」
「ひゃっ……!」
百年、というその大きな時間の桁に高音は思わず間抜けな声を上げてしまう。鈴江も声こそ出さなかったものの驚いたように眉を上げる。
「お前いったい……いや、やめておこう」
何か口から出そうになったが、それを直前で鈴江は押しとどめた。
「歳なら死んでからを含めれば400を超えてるわね。端数は忘れたわ」
せっかく押しとどめた鈴江の善意を素知らぬ顔で打ち砕く。セイン以外の二人は呆気にとられた表情で固まっている。
「さて、ここまで話を聞いてもらってあなた達、特に鈴江はもう何となくわかってるかもしれないけど、私がここにあなたたち二人とこんな話をしたのはあるお願いがあるからなの」
そんな二人を置いてそういうと、セインは急に椅子からすっと立ち上がり、改まった表情で二人に向いて直った。
「どうか、私と一緒にダーネスを探し出すのを手伝ってください」
その長い髪が地面を擦った。
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