秘密の絵

「大丈夫?体調はどう?」

「希望来てくれたのか。」

私は今、健斗の家に来ている。片手にゼリーせ冷えピタが入ったビニール袋を下げて。

私が部屋に入り、机の上に荷物を置くと同時にドアのノックのおとが聞こえた。

「希望ちゃんわざわざありがとう。暑かったでしょ?冷たい麦茶あるから飲んでいってね」

健斗のお母さんだ。私に麦茶のコップを持たせると、静かにその場から出ていった。顔に汗を書いていたのを手で拭い、麦茶を一気飲みする。美味しい。久しぶりに生き返ったみたいだ。

「そうだ。今日絵流に休むって言ったんだけど、ちゃんと俺が休みっていってた?」

体を半分起こした健斗が聞く。

「午後になるまでみんな忘れてて、私が聞いたらそう言えばって言ってたよ」

嘘と声をあげ二人笑い合う。窓の外の気に止まっている蝉も声をあげて笑っているような気がした。

「あと少しでコンクール締め切りになっちゃうけど絵は間に合いそうなの?」

「ぎりぎりだな。でもアタリは描いたからあとは肉付けとかだけだから大丈夫だろ」

健斗の書いていた絵は誰にも見せていない秘密の絵らしい。勿論私も見せてくれなかったし、いったいなにかいているのかわからないものだ。

でも完成したら見せると言っていたので、期待して待つことしかないと思った。


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