恋の条件は捉え方にあり
「花火見たかったな」
「まだその期待裏切っちゃダメだぜ?」
「え……?」
私と健斗がたどり着いた健斗の家の前で何故か立ち止まる健斗を見ていると、中から來末や翔貴の声がした。振り替えると、
「早くやろうよ花火!」と叫んでる二人がいた。
「花火?……花火って…まさか」
最後までいいかけたところで、健斗が私の腕引っ張り玄関までつれていった。早く!と言わんばかりに……。
玄関に入り、びしょびしょになった浴衣を別室で脱がせてもらい、來末の服を借りた。短いショートパンツに、涼しげな水色のグラデーションのTシャツ。來末は似合うじゃんとドヤ顔まじりに誉めてくれた。
「おせーよお前ら」
「早くやろうや~」
と翔貴と健斗が言うと、上から誰かが降りてきた。誰か__私がよく知っている健斗のお母さんだ。手に持っているお盆の上には、夏ならではの食べ物と言えるそうめんがたくさん盛られていた。デザートには端っこにおいてあるかき氷機をつかって大きなかき氷を作るらしい。
私はお母さんを手伝うために走ってそこに向かった。
___「それで、恋の進展はどうなったの?」
相手__弥生さんはコーヒーをおき、こっちを見た。
「はい……これと言う機会はなかったです」
私が肩をくすめると、弥生さんはくすくす笑い、本当に希望は不器用なのね。と言った。
どうしてか聞くと、コーヒーをまたすすり言った。
「皆を待っていて一人だけずっとまたされる。そして雨が降ってきて傘のなかに入れてくれた健斗くん。そして服を揃えてくれた優しさ。これだけでも進展は見られると思うんだけどな~」
「あ、あ~。考えてみればそうかも……」
いまこうして聞いてみれば、あの時の謎の感情の正体も説明がつく。私は明らかに何歩か前進していたんだとすこし嬉しくなった。
「でも、恋をする意味をずっと考えてるだけじゃいい恋はできないからね?もっと夢中になってはっちゃけていいのよ!」
恋をする意味をずっと考えてるだけじゃダメ?
小説のために恋をするという捉え方はいけなかったのだろうか。私は一つお礼を入れ、Mr.Tubasaにお金を支払いその場をあとにした。
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