健斗の優しさ

16:55 待ち合わせ5分前。


私は他の3人を待つため、亦部祭と書かれた大きな看板の下でみんなを待っていた。

「Prrrrr…」

すると、携帯電話が突然鳴り出した。

「希望?ごめん!今私と翔貴で花火大会に必要な道具揃えてるの。だから私達遅れるから、先二人で行ってて!」

……來末は喋るだけ喋って切ってしまった。


待ち合わせ時間_17:00になっても、健斗がやってこない。私はまた携帯電話を取り出して、健斗にかけようとしたのだが……

……ぽつ…ぽつ…

急に雨が降りだし、濡れてしまう携帯電話をしまった。雨を予想してなくって、お祭りに来ている人も急いで屋台をしまったり、頭を手などで隠してる人もいる。

私もずっとここに居たら、ずぶ濡れになってしまう。あたふたしてる私を突然誰かが後ろから手をつかんできた。

「だ、誰っ!!」

後ろを振り向くと、傘をさした健斗が近くにいた。走ってきたのか、とても息が荒い。

「濡れるだろ。入れ」

「け、健斗どうして…?」

ふと思い返せば、今日の部活の時、健斗が何度か外を眺めていた。もしかして、雨が降ること、分かっていたのかもしれない。

「これからどうするの?」

「俺の家に来い。來末も翔貴もまってるぞ?」

えっ……來末はこのためにわざわざ遅れをとったんだ。企んでることがあまりわからない…。

足のほうが雨で濡れていて、浴衣が張り付いて気持ち悪かった。

それにしても健斗の服装のことだ。動きやすい格好と言っていたはずなのに今健斗が着ているのは__

「け、健斗?今着てるのって?」

「あ、あぁ。お前が着てくると思って揃えてみたんだ。お前も、お前らしくて似合ってるぞ」

お姉ちゃんのお陰だな。何故か嬉しかった。他にものない変な気持ちがわき出してきたような気がした。

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