得たいの知れない物

「もしもし?」

「あ、希望?健斗だ。ごめんな夜遅くに。寝るところだっただろ」

夜なので少し押さえ気味に話す健斗に笑ってしまった。

「大丈夫だよ。全然。それで、どうしたの?」

あ、あぁ と、おどおどしている声を出しながら、何か言いたそうに「うーん…」と悩んでいるようだった。

「もしかしてなにも考えないで電話かけたの?」

「ま、まあな。ごめんな」

私は少し笑うと、なんだよって少し恥ずかしそうだった。

続けて大丈夫だよ というと、なぜかとたんに得たいの知れない謎の感情が沸いてきた。それは健斗に関係するのか分からないけど。

きっと私にとっていいものなのかもしれない。

「ねぇ。明日ってなに来ていくの?」

「俺は動きやすい格好にしようかな」

最近の男子は夏祭りの服を着ない。それはもう流行りというものなのか。それに来てくる人が少ないからという理由かもしれない。

その前に、私も浴衣はあまり来たことがない。きっと明日も、普通の私服で行くんだろうなと思った。そして、その後達はなぜか話が続き、電話が終わり、一つ息をはいたときには2時15分をとっくにすぎていた。

こんな長く電話をしたのは初めてだろう。きっと。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る