夏の始まり
「あっぢー。希望この部屋クーラーないのか?
いい加減溶けるぞ」
紙に字を書くシャーペンの音しか聞こえなかった中、健斗が床に寝転がりながら言った。
「しょうがないでしょ?扇風機しかないんだから」
私__久万希望は健斗の近くに寄り机の上の分厚い冊子を指差した。
「健斗ごろごろしてたらまた希望に怒られてんじゃん」
「ま、仕方へんやろ。全く夏休みの宿題進んでないんやもんな」
隣で友達__來末と翔貴がクスクス笑っていた。
現在7月22日。夏休みが始まって3日目。
気温 三十六度。眩しい日差しがカーテン越しから構いなく入ってくる猛暑日の中で私達四人は宿題を減らすための勉強会を私の家でしていた。
「それにしても希望はええよなぁ。宿題、昨日までに終わらせたんやろ?つい先週くらいまで『瀬戸優月 長期休業』って騒いでたくせになぁ。」
自分がやらないだけじゃない。と笑った。
「それに、騒いだんじゃなくて騒がれたのー!
そんなこと言ってるけど翔貴も全然終わってないね?この瀬戸優月が教えてあげてもいいんだよー?」
「チェッ。大人気小説家さんのお恵みっ
てやつやな」
翔貴の言う通り私は小説を書いている。名前は瀬戸優月。つい先週『長期休業する』と言って以来活動を__書くのをやめている。
すると隣で転がっていた健斗が上半身を起こして 「そうだ」と、何かを鞄から取り出した。
「なあなあ、29.30日だっけ?海辺の近くの神社で、ほらるだろ?あれ、あれ皆亦部祭。で行かないか?」
私が健斗を見ると、にやついて笑っていた。
健斗が取り出したチラシに目を通し、今後の予定と照らし合わせる。
「いいねいいね。希望は行ける?」
「私も行けるよ。どっちの日に行くのかだけ決めようよ。」
机の上からとった手帳にボールペンをカチカチと鳴らした。__結局翔貴が29日に野球の試合に見に行くから行かれないと言ったので、全員が揃う30日_2日目に皆でいくことになった。
私は全く進んでいない皆の宿題に気づくと、また「始めよう」と声をかけた。
夏がやっと始まったような蝉の声が聞こえた。
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