第18話 パパ、反撃する。
突入の合図とともに俺と紫苑寺は飛び出した。入口にいる二人の警備員がこちらに気付くが、即座に紫苑寺が発砲。正確に頭を狙い撃ち仕留めた。
「よ、容赦ねぇ……」
「容赦したら
『了解、入り口から階段まで人の姿はありません』
研究所の中の廊下は、俺がいた所と同じように蛍光灯は点いているが薄暗く、壁には扉が左右対称に何列も続いていた。勘解由小路の言う通り人の気配はなく、監視カメラがこちらを向いているだけだったので拍子抜けしてしまった。紫苑寺が迷わず歩き出すので、俺はやや遅れてついていった。
「監視カメラがあるけど大丈夫なのか?」
「リリィがハッキングして映像を差し替えてるから大丈夫だよ」
「小百合子すげぇ」
『小百合子言わないでください』
少し早歩きになりながら奥へ進むと、上の階や地下へ進む階段があった。
「ここからは別行動だ。手はず通りに行くぞ。オレが中央制御室、トモが菖蒲の奪還。位置はリリィがナビゲートするからそれに従えよ」
「お、おう」
「心配すんなって。もし菖蒲を助け出したら、みんなで飲みに行こうぜ」
「さらっと死亡フラグ立てんな。それにお前お酒めっちゃ弱いじゃん」
人もほとんどいないし、軽口を叩けるくらいには余裕が出てきた。これは案外、簡単にアヤさんを助けられるかもしれない。そんなことを考えながら階段を降りて他の階の廊下に出たときだった。
「侵入者だ‼ 撃て!!」
「え?」
声のする方向を振り向く間もなく、銃声とともに側頭部と胸に強い衝撃が襲った。虚を突かれたこともあり俺は倒れてしまった。でも俺は不死身。血は出るけど撃ったそばから傷口はどんどん塞がれていく。とりあえず目をつむり、死んだフリをしとく。
薄目を開けると、俺を撃ったと犯人と思われる警備員が二人の内の一人が近づいてきた。死んだかどうか確認するためだろう。そうだ、もっと近づけ。そいつがしゃがみ込み、俺の顔を覗き込んだとき、俺は両目をカッと見開き左手で胸倉を掴んでやった。
「ヒッ!?」
「つーかまーえた」
警備員が驚いて硬直している隙に、右のアッパーカットで金的攻撃し一人沈めた。俺はすくっと立ち上がり、残りの警備員へ向かってダッシュする。警備員が状況を飲み込めていない間に背中に回り込み、うなじにチョップを喰らわせ気絶させる。
「すまんが、少しの間眠ってくれ」
キマった。人生で一度は言ってみたい台詞ベスト10も言えて満足。あれ、オレってもしかして強いんじゃね? アヤさんとのトレーニングの効果出てるんじゃね!? ――なんて調子こいてると、気絶したはずの警備員が起き出した。
「うぅ……」
「うわぁ!? ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……‼」
パニックになった俺は謝りながらがむしゃらに警備員を蹴ったり殴ったりボコボコにして、今度こそ確実に気絶させた。
「ふぅ……す、すまんが少しの間眠っててくれ」
やはり調子に乗るのはいけないな。不死身だと命に危険がないから、どうしても危機感が薄くなってしまう。倒した警備員のマシンガン銃を拝借していると、ヘッドセットから後輩の呆れた声が聞こえてきた。
『何やってるんですか先輩……』
「勘解由小路か、どうだ? 俺の勇姿は? アクション映画みたいだっただろ?」
「アクション映画というか、ゾンビホラー映画って感じでした」
「誰がゾンビだ」
相変わらず失礼な後輩だ。まったく先輩の顔が見てみたいもんだ。
「だってそうでしょ、撃っても死なないんですから。どんな精鋭部隊も武器も不死身の前じゃ形無しですよ」
「それより勘解由小路。警備員がいること、なんで教えてくれなかったんだよ!?」
「先輩死なないし、いいかなって。てへぺろりん☆」
「アヤさんに言いつけてもいいのか」
「……この先をまっすぐ行くと、また階段があるのでそこを降りてください。奥へ進めば
「なにが『さあ、急ぎましょう』だ」
通信が終わったことを確認すると、俺は脇目もふらず一目散に走った。アヤさんも娘も待ってろよ。パパがすぐに助け出してやるからな。
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