第14話 蛙の子は蛙?
クリスマスも終わり一気に年末ムードになった。アヤさんの妊娠が発覚し、病院から帰って来たところで、携帯の着信が鳴った。着信先を確認しつつ、そういえばいつもこのくらいの時期だったなと思いながら電話に出た。
「もしもし、わたしよわたし!!」
「母さんどうしたの?」
なんだか声が焦っている。何か切羽詰まったことが起きたのか。
「実は車で事故っちゃって…」
「えっ!? 大丈夫!?」
「私に怪我はないんだけど、相手が……だから示談金100万円を指定の口座に振り込んでーー」
「オレオレ詐欺かよ。つか母さんじゃん!!」
「ちょっと警察の人と替わるから」
「えっ」
「えっ……あー、も、もしもし? け、警察の者なんですが」
「父さんじゃん!! ムチャぶりによく頑張った」
「……すまん、母さんと替わる」
改めまして、ウチの母、
「もしもし
「うん、帰って来るよ」
「まぁあんたが来れなくても、
「おい」
「だってあんたの顔見飽きたし」
「見飽きた言うな」
幸い、世に言う嫁姑問題はうちでは起きず、母さんはアヤさんのことを実の娘のように溺愛している。下手をしたら実の息子の俺よりも。
「あんたの顔より、早く孫の顔を見たいんだけどねー」
「それなんだけど、今日病院行ってきたんだ。妊娠三カ月だってよ、おばあちゃん」
「えっ、ホント!? エイプリルフール?」
「年末だよ」
「カメラどこ?」
「ドッキリじゃねぇよ」
電話の向こうで母さんが父さんにも伝えてるらしい。嬉しそうな声が聞こえてきて、なおさらこっちも嬉しくなる。
「あんたと菖蒲ちゃんの子ねぇ……顔は菖蒲ちゃん似がいいわね」
「アヤさん似の娘とか絶対可愛いに決まってる。だってミニ・アヤさんだろ? 可愛くないわけがない」
「でも蛙の子は蛙っていうし、こればっかりは授かり物だからねぇ」
『蛙の子は蛙』の言葉に、俺はふとある考えがよぎった。不死身な俺とアヤさんの間にできた子どもは不死身になるのか。不死鳥の子は不死鳥になるのか……。
「菖蒲ちゃんと話したいから代わって」
「お、おう。アヤさん、母さんが話したいって」
「もしもし? お義母さん、ご無沙汰してます――」
なんで今まで気付かなかったんだろう。今までそういう話は振られなかったけど、アヤさんは気付いているのか。
もし子どもが生まれたときから不死身だったらどうなる。特に大きな病気や怪我がなければ、健康優良児か治癒力が凄いと思われるくらいでバレないかもしれない。
でも、もし大きな病気や怪我をしたらどうなる。もしそれが人が多くいる幼稚園や学校だったら、周りはどう思うだろう。怪我がすぐに治って良かったね、で済む話じゃない。
俺は今でも覚えている。まず不思議がり、驚き、化け物を見るように変わる人々の目を。鳴り止まない様々な携帯シャッター音を……。
「ーーモ、トモ!!」
「うぁい!? ど、どうしたアヤさん?」
「電話終わったから携帯返そうと思って」
「母さんたち何か言ってた?」
「おめでとう、とワタシに無理をさせるなって。トモ何か考え事でもしてたの? 険しい顔してたけど」
やっぱりちゃんと話し合うべきだよな。大事な大事な我が子の由々しき問題だ。
「俺たちの子どもがな、不死身だったらどうしようと思って色々考えてた。そしたら昔のことを思い出しちゃって」
「昔ってのはトモが不死身だって分かったときのこと?」
「そうそう」
俺が不死身だと知ったのは、25歳のとき、社会人になって3年目の5月のことだった。実はまだアヤさんにも言ったことがなかったけど、せっかくの機会だ。俺は奥にしまい込んだ記憶を手繰り寄せながら、アヤさんに話し始めることにした。
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