第6話
動物病院で、ハルは手術を受けていた。
尿路結石で、二時間くらいの手術。
僕達には、それが永遠に思えた。
眼鏡をかけた江本が、目に涙を溜めて震えている。
「ハルは、元気になる。絶対、大丈夫。」
僕には、江本に声をかけるしかできない。
でも、必死で声をかけた。
手術室から獣医さんが出てきた。
「手術は無事、終わりました。」
その言葉に、僕達はほっと力が抜けた。
僕と江本は、顔を見合わせて微笑んだ。
動物病院から帰る。
江本は麻酔が覚めたハルを抱きかかえている。
僕は、口を開く。
「ねぇ、江本さん。」
「何?」
いつもの調子だ。
「『黒猫少女』、進んでる?」
「え?」
江本は、僕の顔を見た。
「図書室でいつも書いているの、『黒猫少女』なんでしょ?」
「ええ、まぁ…」
江本は、少し赤くなる。
「僕達、これからも一緒にあの公園のベンチで本を読もう。そんで…」
江本の目を真っ直ぐ見て言う。
「『黒猫少女』が書けたらさ、一番に僕に読ませてよ。」
少し涙を滲ませ頬を赤くして頷く少女は、まぎれもなく江本でルナだった。
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