第5話
朝、久しぶりに早く家を出た。
朝の空気は美味しく、すがすがしい。
公園の前を通りかかる。
「ハル、お飲み。」
ルナの声だ。
ルナ、この時間も公園に来てるんだ。
公園に入ろうとして見てみると…ルナじゃない。
江本がハルに、お皿にミルクを注いでやっている。
僕は、しばらく立ち尽くした。
すると、江本もこっちを見て、僕に気付いた。
僕も江本も、固まる。
僕はどうしたらよいか分からず、そのまま学校へ向かった。
江本が、ルナ。
やっぱり、そうだったんだ。
今日は何だか気まずくて、図書室に行かず、公園にも寄り道せずに帰った。
家のベッドで、ゴロンと横になる。
別に、騙されていたわけではない。
ただ、あの江本とルナが同一人物だなんて結びつかないし、どちらに会っても、どんな顔をしたらいいのか分からない。
僕は、ふと『きみの友だち』を手に取った。
パラパラと本をめくる。
すると、しおりが挟まっていた。
何気なくしおりを見ると、メッセージが書かれていた。
『棗くんへ
あなたがこのメッセージを読んでいる時にはもうばれているかも知れません。
私、ハルしか友だちがいなかった。
眼鏡をかけた江本は醜く妖怪じみていて、誰とも仲良くできなくて。
眼鏡を外したルナに話しかけてくれて、私、すごく嬉しかった。
でも、ルナは江本なんです。
それでも、棗くんは今まで通り友だちでいてくれますか?
江本 瑠奈』
僕は、いたたまれなくなって家を飛び出した。
公園のベンチへ向かう。
ルナは…いない。
しかし、ベンチの下でハルがうずくまっているのに気がついた。
僕は、慌ててハルを抱き上げる。
「ハル、どうした!」
その時、江本も学校の制服のまま公園のベンチへやって来た。
「ハル!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます