第3話

図書室の机で、眼鏡をかけた江本が何かを書いている。

僕が通りがかると書いているものをパッと隠して睨む。

「何よ!」

「いや、通りがかっただけだよ。」

僕は、さすがに反抗した。

「何でもないなら、さっさと行って。」

江本は、ツンツンしている。

可愛くない。

僕は、読み終わった『くちぶえ番長』を返し、『青い鳥』を借りてさっさと出て行った。


僕は、公園のベンチでルナに図書室での出来事を話した。

「まったく、感じ悪いったらありゃしない。」

しかし、ルナは言う。

「そのコ、別に悪気があるわけじゃないんじゃないかな?」

「え?」

「どうしたら人と仲良くできるのか分からなくて、キツい言い方になってしまうだけだと思う。多分、そのコ、本当はすごく寂しがり屋なんだと思うよ。」

江本はいつも一人だ。

クラスで、誰かとペアをつくる時も必ず余る。

そんな時、確かにどこか寂しそうな顔をしている。

「あなたから何か、話しかけてあげたら?」

「え、でも、怖いよ。」

「多分、そのコも人と話すのが怖いだけだと思うよ。」

「そうなのかな?」

その時、ルナの持っている本が『きみの友だち』ではなく『エイジ』に代わっているのに気付いた。

「あれ?『きみの友だち』、読み終わったの?」

「ええ。すごく、面白かったわ。足の悪い恵美ちゃんと病気がちの由香ちゃんの友情の物語だけど、恵美ちゃんの弟、ブンちゃんとか、色々な友だちのエピソードが散りばめられているの。おすすめよ!」

「そうなんだ!もしよかったら…厚かましくて悪いんだけど、貸してくれる?今、図書室になくて。」

ルナは、少し困った顔をした。

「ごめん。あれ、友だちから借りた本だったから、返したの。」

「そっか。ルナちゃん、友だち多そうだもんね。」

「いいえ、全然いないわ。」

「そんなこと、ないでしょ。こんなに可愛くて、性格もいいんだし。」

「いえ、本当に。」

ルナは、悲しそうな顔をした。

そんなルナに、黒猫のハルは愛おしそうに体をすり寄せていた。

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