第3話 雀

銀行強盗・小雀(コガラ)は、嵌められた。数ヶ月前、亡くなった父親の遺産を受け継いだが、まさかそれが借金だったとは夢にも思わなかった。その額、約7000万円。債権者は非合法の金融会社、所謂闇金業者で、しかも父親は知った上で借りていた。

数ヶ月前のある日、小雀の元に弁護士が訪ねてきた。もう20年も音信不通の父親が半年前に亡くなった事とその父親の遺言で遺産を全て小雀に遺す事を伝えにきた。小雀はその権利を放棄しようと思ったが、金額が2000万円と知って欲をかいた。それが、過ちだった。

遺産相続の手続きが済んだ翌日、闇金がやって来た。そして、父親の借金が約9000万円ある事を告げ、返済を要求して来た。小雀は関係ないの一点張りで乗り越えようとしたが、相手は海千山千だったので、瞬く間に小雀は言い負かされ言いくるめられた。結局相続した2000万円を返済に充て、残りは来月から約10万円ずつ支払うようになってしまった。その時闇金が言った一言で、小雀は全てを悟った。

「親不孝は、するもんじゃないよな。」

これは、父親の復讐だ。

20年前、小雀は何も告げずに家を出た。人懐っこい父親がとても疎ましく思い、何も告げずに家を出た。しかし、人懐っこいは寂しさの裏返しだと後で知った。そして、寂しい想いをずっとしてきた父親は、その原因が一人息子だと思い込み、いつからか憎むようになった。いわば遺産は、そんな憎しみが込められた父親の捨て身の攻撃だった。小雀は、その攻撃で見事に致命傷を負ってしまった。

小雀は、起死回生を図る為、八方手を尽くした。法律を学び、協力者を探し、生活を替えてまで起死回生を試みた。しかし、法律は小雀にとって難解で、協力者は次々と理由を付けて逃げ、替わった生活は更に小雀を苦しめた。

そんな状況を数ヶ月過ごした小雀は、遂に犯罪者になった。本物の銃を手に入れ、身近の銀行を襲い、そして人一人を撃ち殺した。小雀は、銀行強盗の常套句を叫んだ。

「金を出せ!」

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