魔王の心が折れそうになったワケ Ⅲ
ミイトを
エストにミイトと荷物を持たせて飛んで貰うよりも速いからだ。
大丈夫だと思ってはいるが、なにせ相手は羅刹である。
"ミイト…。"
サウムと手を繋いで空を飛ぶのは、エストにとっては本当はとても嬉しい事の筈だった。
それが戦った後での
だが、彼女の視線は気絶しているミイトの左腕が失われた肩口に向けられたままである。
…彼が気が付いたら、なんと言えば良いのだろう?…そう考えると彼女の心は、
「国境線を超えて幾らか経ったな…。
サウムが
エストはサウムと一緒に
多少、
「そういえば、ミスリルの義手義足が完成して力が戻ったのね?おめでとう、サウム。」
エストが降りながらサウムに、そう言葉をかけ
「ん?んー…まぁなぁ…ちょっと、その事で相談があるんだが…。」
着陸したサウムは、荷物とミイトを地面に降ろすと汗をかきながら言い
「本来の片手と片足を失った状態で魔力を最大限に
エストは何を今更と、彼女も既に知っている
「そこで義手義足を付けて魔力で操りつつバランスの
サウムは義手を外しながら説明を続ける。
「このミスリル製の義手義足なら俺の
今度は座って義足を外しながら言う。
エストは嫌な予感がし始めていた。
「全力に近づくと今度は、このミスリル製の義手義足が
サウムは微笑んでエストに言う。
「だからこうして、そうなる前に外しているんだが…この義手義足を使うのは、非常に疲れもするんでね。俺もこの後で
サウムは片手でエストを
「え?…えええええええええぇーっ?!」
エストは驚きのあまり
その後、覚えたての強化魔法で
「…
彼女は
王宮で羅刹ことインの報告を受けていた神帝が、驚愕の表情を浮かべている。
「にわかには信じがたい事だ…。あのストネ殿が?」
彼女の優しさに触れて、国内の西の魔神に対する
「神帝が最初に見た彼女に対する評価が、間違っているとは申しません。しかし
インは神帝の疑問に、そう答えた。
「しかし、彼は既に弱体化を
「
インの言葉に神帝は、
「こちらには教国に対する
「我々が相手をしなければならないのは、
インの西の魔神に対する高い評価に神帝の顔は、やや青ざめる。
「…とはいえ西の魔神の復活も、私にとっては
神帝の顔が喜びに綻ぶ。
インも神帝に微笑みを返すと
謁見の間から出た所ですれ違い様にインは、神帝そっくりの男に声を掛けられる。
「引き篭もりの兄上の
「摂政殿…。」
神帝との謁見にも名前の挙がった摂政は、神帝の実の弟にあたる。
病気がちの神帝の代わりに帝国の
その彼の兄への言い様が西の魔神と同じだったので、インは
「聞いたぞ?西の魔神を取り
「
インは
その件に関して神帝からは、
そういう
「俺が神帝ならば兄の様な
「…兄上殿の方が
インは、それ以上の事は付け加えない。
摂政はハンっ!と、せせら
「
摂政は途端に少し
「西の魔神に斬られた胸の傷は痛むか?神帝には報告したのだろうな?」
服の下が
「かすり傷ですので…。神帝には
「西の魔神と教国の姫…双方の両親の仇という立場も大変なものだな。」
元々は見せしめに彼らの首を
だが、捕まえたのもインなら最終的に首を撥ねる役だったのもインには違いない。
しかし摂政には、かまをかけてもイン自身が、どう思っているのか…インの変わらない表情からは
自分の事は
「摂政殿、あまり間者に頼るのは感心しませんな…。私に引っ付いている
摂政がインに何が起きたのかを間者を使って
そして、インは摂政が教国を含めた他国に間者を
「目に手の代わりは出来ませぬ。行き過ぎた間者の使い方は、一つ
インは
摂政は苦虫を噛みつぶした様な顔をすると、元の進行方向に向き直って手をひらひらさせながら
「お前の
教国の宮殿の地下には、大きな扉が一つある。
ある老人が一人で、そこに
国王、その人である。
彼は扉に手をかけると語りかける様に呟いた。
「勇者が羅刹と闘って引き分けたらしい…。一時は、どうなる事かと思ったが…魔王の
国王は最初こそ笑顔で扉に話し掛けていたが次第に
「だが、その魔王に抱えられて勇者が帰ってきたらしいとの
国王は胸を苦しそうに押さえながら続けて呟く。
「また…お前に頼らざるを得ない日々が、来てしまうのだろうか?…
国王は
扉は今は
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