第5話
魔王の国が儲かるワケ Ⅰ
少し広めの庭のような
サウムは通常の義手と義足で、ミイトは
「お互いに、こうなる前に一度あんたとは全力でやってみたかったんだけどな…。」
「以前の自分の状態だったなら、
ミイトの言葉に対してサウムは、特に
「この普通の義手と義足じゃ、隻腕になったミイト相手でも本気の試合で勝てる気はしないけどな…。」
「ミスリル製の義手と義足の調子はいいのか?」
サウムは微妙な表情をしてミイトの質問に答える。
「…悪くはないな。全力に近い魔力を流し込むと一転して、こちらの魔力を
最後に
ミイトは風呂へと向かうが、サウムはバドシに呼び止められる。
「…エストを暫く貸して欲しい?」
バドシのお願いの
エストは風呂から上がって
裸の上にバスタオルを巻いて鏡を見ながら別のタオルで髪を拭こうとしている。
彼女の表情は
そこへ原因の男が、上半身裸で入って来た。
「おっと、悪いな。
エストは一瞬ひきつって悲鳴を上げかけたが、ミイトの左腕のない肩口を見ると引き返そうとした彼を呼び止めた。
ミイトは彼女に背中を向けたままで用件を尋ねるが何も答えが返ってこない。
やがて、腕の無くなった左肩付近にエストが、そっと触れてくるのを感じた。
彼女は優しく
そして後ろからグスグスと、すすり泣く声が聞こえてきた。
ミイトは…またか?…と思って半ば呆れている。
「いちいち人の肩を見て
「でも…だって…。」
ぶっきらぼうだが
「義手は着けないの?」
「ほぼ肩口から先が無いから俺の低い魔力じゃあ着けられても、大きめの義手は
エストの質問にミイトは答えた。
目に涙を浮かべてエストは、ミイトの
くすぐったいのでミイトは、
エストは
ミイトの
「今、サウムに改めて
「…うん。」
エストは胸に耳をあてたまま頷いた。
上からその様子を眺めていたミイトは、
エストは驚いて目を
ほんの僅かな時間でミイトが、一旦は唇を離してエストに尋ねる。
「…
「…キスなんて挨拶みたいなものなんでしょ?」
「…どうかな?」
二人は再び瞼を閉じて改めて口づけを交わした。
今度は、もっと深く長く…。
ミイトが優しくエストの肩に右手をかけて、そのまま引き寄せた。
エストは、なすがままに誘われてバスタオル越しに肌を密着させる。
ゆっくりと唇を離したミイトは…じゃあな…と一言だけ残すと、風呂には入らずに
エストは、ぼーっとして脱衣所の扉を開けたまま彼を見送っている。
ミイトが
段々と意識がはっきりしてきた彼女は、とある重大な事実に気が付く。
「私のファーストキス?!」
脱衣所に大きな声が響き渡った。
雰囲気に流された結果による
そこへバドシが入って来る。
「すみません、エストに頼みが…って、どうかしたんですか?」
「…挨拶だからノーカンだよね?」
「…何がです?」
エストの意味不明な質問に対して質問で返すバドシだった。
エストは気を取り直すとバドシを元気良く迎えて用件を尋ねる。
「なんでもない!…私に頼みって?」
「実は…貴方に故郷に帰って
「…へ?」
エストの頭の中で
エストが国に帰ってしまうという話を聞いたミイトが、慌ててサウムの家を訪ねたのはエスト達の夕食の後だった。
人づてに話を聞いた直後にミイトは、自分の内偵と彼女の護衛任務は失敗に近かった事を思い出し、その瞬間から彼の頭の中では解雇の二文字が躍っている。
…まさかとは思うが任務失敗が原因で責任を感じたエストは、勇者見習いの仕事を
「なんで、そんな考えになったんだよ…?」
ミイトを
そして、彼をエストの部屋に案内する。
サウムの家でエストに
それと同時に、疑問が
「一体、二人で何をしてるんだ?」
「あ、ミイト…ゴメンね、私ちょっと自分の国に帰るから…。」
ミイトは頭を
「実は以前にエストさんの国で
「爺やも…
楽しそうに荷造りをする二人を見てミイトは、
「いいなぁ…俺も行きたいなぁ…。」
「別に構わないぞ?エストも言った通り大きな仕事は、暫くは無いから俺一人でも大丈夫だ。何かあったら連絡はするから、状況に合わせてエストの羽根で戻って来てくれればいいさ。まぁエストが、お前を故郷に連れて行ってもいいって言うならの話だけどな。」
ミイトの
「いや、しかし…今さら
「お前と同じ部屋でいいだろ?」
「ちょっと待って?」
エストは、そう言うとミイトに近づいていった。
なにやら呪文を唱えると、ミイトに向かって両手をかざして彼の頭から足の
ミイトは特に身体に悪影響は、感じなかったので
「エスト?何をしてるんだ?」
「ちょっとした
探知が終わったらしい彼女は、微笑んで言った。
「うん、ミイトも良かったら一緒に来てよ。貴方に渡したい物があるの。」
チッ!とかいう舌打ちの音が、後ろ姿で準備を続けているバドシの方から聞こえた様な気がしたミイトだった。
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