魔王が勇者の見習いになったワケ Ⅴ
数ヶ月後に北の魔王の国は、状況が
もはや飢えで苦しむ民の姿は無く。
魔王城の存在する山の下にある街は、活気を取り戻していた。
誰も他の国へ、わざわざ略奪をしに行く必要は無くなっている。
全ては極寒の地の資源を諸外国に輸出してきた成果だった。
その資源とは北の魔王の国にある
北の魔族は寒さに強いという特性を
そして、同じ支部から借り入れた資金で建てた魔族の魔術師達の働く専門の工房で、
それらは主に
今までは
永遠の極寒の地である北の魔王の国は、経済的な冬を何とか
この数ヶ月の間に北の魔王の国の建て直しを手伝っていた勇者は、共和国にある自宅に戻って久しぶりの
話題の中心は主に北の国の新魔王であるエストのことで、勇者は別れ
別れ際のエストは瞳を
彼は、この国の救世主であり自分達を救ってくれた命の恩人で彼自身の預かり知らないところで彼女の初恋の人になってしまっていた。
ところがエストは今までは勇者のことを勇者様と呼んでばかりで名前に関して尋ねる事さえ気恥ずかしいらしく、勇者の名前を全く…これっぽっちも知らなかった。
それは何かと忙しかった勇者も同様で彼女の事を君とか魔王とかで呼んでばかりで名前に関して知る機会は、これまで無かった。
「なんだか変な感じですけれど、改めまして…エストと申します。正式な
「それはそれで何か恥ずかしいけど…俺の名前はサウム。まぁ、また会う機会でもあればサウムでも勇者さんでも、どちらでも構わないよ…様を付けなければ…。」
そう言いながらサウムは自分の荷物入れから一つの白い羽根を取り出した。
「この白い羽根を持ったまま魔力を込めて念じると、あらゆる
エストは、ぱぁっと表情を笑顔で輝かせると、とても嬉しそうに白い羽根を両手で受け取った。
「宝物です…大事にします…絶対に大事にします。」
エストは別れの
「お前…それ
ミイトはサウムの気前の良さに呆れて言った。
神器は世界に一つずつしかない神の持ち物と言われてる。
言い伝えであり
サウムの羽根は
この、あらゆる障壁や結界を無視できると云うのが神器たる
「昔は
サウムは事も無げに答える。
「それにしてもなぁ…。」
ミイトが
勇者がドアを開けると魔王が、そこに立っていた。
魔王エストは勇者サウムに飛びつくと一気に
「私を貴方の弟子にして下さい!勇者の仕事を習いたいんです!爺やも社会勉強として賛成してくれました!国のことは爺や達に全て任せて引き継いで来ました!それに!それに…。」
エストは頬を赤らめながら、しかし真面目に、大胆に、真剣に告白する。
「私は…貴方のことが好きです…。ゆくゆくは私と結婚して私の国の王になってくれませんか?」
ミイトは笑いを押し殺してサウムに告げる。
「はっきりと言ってやれよ、お前の気持ちを…。」
サウムはようやく状況を
「あー…エスト?」
「はい!」
初めて名前を呼ばれた魔王は、
「君の気持ちだけは有難く受け取っておくけれども…実は…俺には婚約者がいるんだよ…。」
「…はい?」
エストの目は点になった。
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