第5話
カオステラーであると思われた大入道は意外なまでにエクス達の相手ではなかった。確かにその腕力は恐ろしいものがあり、力太郎ですら軽々と放り投げられ、その拳を受け止めただけでハインリヒの盾は無残にひしゃげてしまった。それでも、その動き自体は鈍重で、戦闘中盤には力太郎以外の四人には大入道の殆どの攻撃は当たらなくなっていた。
そして最後には、ジャックの渾身の斬撃と力太郎渾身の金棒フルスイングのツープラトンをまともに食らった大入道は大の字にぶっ倒れ、そのまま動かなくなった。
「やったにはやったが・・・やけにあっけねぇな」
動かなくなった大入道を見下ろしてタオが呟く。
「全くもって消化不良もいいとこじゃのう」
力太郎も面白くなさそうに吐き捨てる。
「レイナ、カオステラーの反応はどうなの?」
尋ねながらエクスがレイナに近づき、タオとシェインもそれに続くようにレイナのそばへ寄っていく。
「カオステラーの反応は・・・どういうこと!?どんどん強くなってく!!」
レイナが困惑したように大声を出す。
「・・・モノタリン」
その直後、突然発せられた声に思わずタオが声の主、力太郎の方に振り返る。その目に映ったのは、黒い霧に包まれて、尚且つその霧を体に取り込み徐々に体を黒く染めていく力太郎の姿。
「マジか・・・カオステラーはお前だったのかよ・・・力太郎!!」
エクス達が見つめる中、力太郎の体はどんどんと黒い霧を取り入れ、普段の三倍ほどに膨れ上がっていった。
そして、霧を全て取り込み終わると真っ黒に染まったその巨体はギュウッと凝縮され、元の大きさに戻った。
「また、こうなのか・・・っ!」
エクスが悔しそうに声を絞り出した。今まで巡ってきた想区でも、親しくなったその想区の主人公がカオステラーだったことが幾度かあった。レイナもシェインもエクスと同様に悔しさや納得できなさを顔に滲ませている。
「モノタリン・・・モノタリン・・・」
カオステラーに変貌を遂げた力太郎は、うわごとのように同じ言葉を繰り返している。エクス、レイナ、シェインが困惑する中、タオが力太郎の真正面に立ちはだかった。
「タオ!危ない!!」
「・・・こいつが物足りねえってんなら、俺が満足するまで付き合ってやるさ。ダチの俺がよ!!」
「ちょっと!また何か無茶するつもり!?」
「大丈夫だ、心配すんな」
レイナの叫びにそう答えると、タオは懐から栞を一枚取り出した。
「あれは・・・ハインリヒさんの栞じゃないみたいですけど」
「来いよ!お前が持て余してる力、俺が全部受け止めてやるよ!こいつの力を借りてな!!」
そう言うと、タオは取り出した栞を空白の書に挟み込む。光に包まれたタオの体が徐々に姿を変えていく。光が収まったそのときその場には、百年記に記された巨人兵ゴリアテが仁王立ちしていた。
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