第4話
「・・・はて?」
ほどなくして中庭に現れたヴィランを一掃すると、シェインは首をかしげた。最初に現れたヴィランのあとに、第二陣が現れる気配が全く無いのだ。
「この想区にしては、不気味なくらいあっさり終わったわね・・・」
この想区に来てからというもの、メガヴィランと戦うことがほとんどだったため、レイナもこのあっさりと決着のついた戦闘を怪訝に思った。
「・・・まあ、辺りにヴィランの気配も感じないし、明日に備えて眠りましょう」
「はい。食事中に力太郎さんに聞いたところによると、目的の町もここからそう遠くないようですから」
もう一度辺りの気配を確認した後、レイナとシェインは布団を敷いて寝床を作り、眠りについた。
男達がそのまま一晩中捨て置かれたのは言うまでもない。
「お嬢!面目ねえ!!」
「レイナ、シェイン、ごめん!!」
「すまなんだぁ!!」
宿から目的の町へ向かう道中、男三人がレイナとシェインに平謝りに謝っている。
「シェインによれば、エクスと力太郎は無理やり飲まされたからまあしょうがないとして・・問題はタオね」
そう言ってレイナがタオをじろりと睨みつける。無論、三人が熟睡している間にヴィランに襲われた事はとうに伝えてある。
「うう・・・マジで申し訳ねぇ。ここのところ、どうにも旅が楽しくてよ、ついつい昨日はハメを外しちまった・・・」
タオにしては珍しく本気で落ち込んでいるらしく、シュンとうなだれてしまっている。タオの性格上、レイナ達が襲われている最中に呑気に寝こけていたことが相当に応えているのだろう。
「・・・本当に反省してるみたいだし、もういいわ。次からは気をつけるようにしなさいよ」
レイナもそんなタオの心情が段々と分かってきたため、それ以上は責めずに話を打ち切った。
「エクス達も、このお馬鹿から勧められても次からはちゃんと断るように」
最後にエクス達にも一応の釘を刺して、この話は終わった。
「それにしても、なんで昨晩はそんなにあっさりヴィラン達が消えたのかな」
「それは・・・考えても分からない。それに、もう済んだ事よりも次の事を考えなきゃいけないわ。先に行ってもらっていたシェインが戻ってきたから話を聞きましょう」
情報収集のために一足早く目的の町に向かっていたシェインが小走りでこちらに戻ってきた。
「話を聞いてきましたけど、町の人たちは相当参ってます。何でも夜な夜な怪物が現れて、年頃の町の女性をさらっていくわ食べ物は要求するわでやりたい放題らしいです」
「女と飯たぁ随分人間くせぇ化け物もいたもんだな」
「化け物が何してるかはどうでも構いやせん。そろそろひと暴れしたくて体がウズウズしてたまらんわ」
体の疼きを表すかのように、力太郎が首をゴキゴキと鳴らしながら左右に振る。
「怪物は夜になると町の入り口に現れて侵入してくるそうです。なのでシェイン達が予め村の入り口で待ち構えて、迎え撃つというのはどうでしょうか?」
シェインが目の前で人差し指を立てながら提案する。
「いい考えじゃないかな。それなら町の人にも被害が出ないだろうし」
「そうね、それでいきましょう」
「っしゃあ!そうと決まれば気合入れていくぜ!お嬢、今夜はカオステラーぶっ倒してサクッと汚名挽回してやるから期待してくれ!!」
「・・・タオ兄、そこは汚名返上でお願いします」
その夜。エクス達は町の入り口で怪物が現れるのを待ち構えていた。皆昼間のうちに仮眠を取ったので、眠気という点では問題ない。もちろんお酒も飲んでいない。
「力太郎さん、力太郎さん」
「なんじゃいシェインどん?」
かねてから感じていた疑問を解消するため、シェインが力太郎に声をかけてきた。
「シェインが知っている話ですと、力太郎さんは二人のお仲間と出会う筈なんですが、ご存知ないですか?」
「う〜ん・・・おお!さては御堂こ太郎どんと石こ太郎どんのことかのう!
「おや、もうすでに出会ってたんですか。なんで一緒じゃないんですか?」
「二人ともワシが一人で旅してる時に勝負をふっかけてきてのう。どっちもぶっ飛ばしてやったら子分にしてくれなんて言ってきたんじゃが、如何せんフラフラじゃったもんで、後から追いついてこいっつうて置いてきてしまったわ」
そこまで言っていつものように大きく笑おうとした力太郎だったが、待ち伏せをしているという自分の立場を思い出して慌てて手で口を塞いだ。
「なるほど〜、やっぱりカオステラーの影響なのか、微妙に物語が変わってますね」
うんうんと頷いてシェインが納得していると、二人にエクスが声をかけてきた。
「二人とも、来たよ!」
少し離れた場所で待機していたレイナとタオはすでにコネクトを済ませて臨戦態勢を整えている。エクス、シェインもコネクトを済ませ、力太郎も百貫金棒を握りしめる。
町に続く街道に、ズシンズシンと地響きをさせ身の丈四、五メートルを超える大入道が現れた。
「カオステラーの気配が強くなってきたわ!」
レイナの声とグオオゥという大入道の咆哮を合図に、エクス達は大入道に向かっていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます