第3話

一見すると圧倒されてしまうゴーレムヴィランではあるが、攻撃方法自体は両拳を振り下ろしてくるか、やはり両拳を突き出して突進してくるかぐらいである。数々の戦いをくぐり抜いてきたエクス達にとっては、油断はもちろんできないがそこまで驚異的という相手ではなかった。先にドラゴンヴィラインと戦った時のように、攻守・後方支援の役割分担を的確に行い、ゴーレム達を一体一体確実に倒して行く。

八体ものゴーレムヴィランを一度に相手取るのはエクス達には初めてであったが、四人が相手取っている以外のゴーレムは力太郎が引きつけていてくれている。とはいっても、金棒で力一杯ゴーレムをぶん殴り胴体をひしゃげさせたり、突進してきたゴーレムを体一つで受け止めて他のゴーレムに投げつけたりと、引き付けるの範疇に収まらない暴れ方で、結局力太郎自身も二、三体のゴーレムを倒してしまっていた。



「いやあ、役得って奴だな。さっきの茶店の爺さん、店守ってくれた礼だって言ってこんなに団子をくれたんだからな」

街道を歩きながらホクホク顔でタオが喋る。その手にはヨモギ団子がいっぱいに入った厚手の紙袋が抱えられている。

「ングング・・・そうですね。道中のおやつにはこれで事欠きませんね」

横から紙袋に手を伸ばし、団子をつまみながらシェインがそれに応える。

一行はゴーレムヴィランとの戦いを制した後、引き続き街道を進んでいた。

「今更だけど、力太郎はどこへ向かってるの?」

力太郎の隣を歩きながらエクスが尋ねた。

「この街道まっすぐ行ったところに大きな町があって、恐ろしい化け物が悪さをしてるって話だからのう、ぶっ飛ばしてとっちめてやろうと思ってなあ!」

エクスに問われた力太郎はそう言ってガハハと大きく笑ってから、逆にエクスに問いかけてきた。

「さっきの茶店で聞いた話じゃあ、お前さん等はこの世をしっちゃかめっちゃかにしちまう、カオスなんとかを退治するために旅してるんじゃろ。わしと一緒にいて良いのか?」

「うん、それについてはレイナに考えがあるみたいなんだ」

「力太郎、あなたの今言った町に近づくほどに私達を襲撃してくるヴィランが強力になっている。それに、ヴィランが襲撃してくる度にカオステラーの気配を感じるの。おそらく町に居るという怪物にカオステラーが憑依している可能性が高いと思うわ」

真剣な表情でレイナが自分の意見を二人に伝えた。

「なあるほど、お互いに目的は同じっちゅうことじゃな。そんならこっから先も、旅はなんとか世はなんとかで行くとするかのう!」

そう言って力太郎は自分の両脇を歩いているエクスとレイナの背中をバンバンと叩いた。

「ええ、私もそれが良いと思うわ。・・・って言うか痛すぎるわよ!少しは手加減して!」

「あはは・・・たしかにちょっと痛かったかも」

2人から冗談交じりに抗議され、力太郎は少しばつが悪そうに頭を掻いた。そうこうしていると、タオとシェインが三人の方へよってきた。

「姉御、姉御。結構日も落ちてきました。そろそろ宿を取りましょう」

「もうちょい歩いたところに猪鍋と地酒が名物の宿屋があるらしいぜ。美味いもの食って美味い酒飲んで、旅と戦いの疲れを取るってのもいいんじゃねえか?」

お猪口で酒を飲むジェスチャーをしながらタオが提案してくる。

「んもう、カオステラーに近づいてるのに緊張感が足りないわよ!」

「そこの宿屋、美肌効果に定評のある温泉も有名らしいですよ」

「・・・休息も大事よね、うん!」

「さすが姉御、チョロいにも程が・・・いえいえ、物分かりが良くて素敵です」

「ようし、そうと決まればもうひと頑張り、宿屋まで歩くとしようぜ!」

「猪鍋か、楽しみじゃのう!」

皆それぞれに今夜の宿に楽しみを見出したためか、一行の歩調が早くなってきた。エクスはそんなちょっとした旅行のような空気に心地良さを感じ、自然と顔を綻ばせた。



「ふ〜、食いも食ったり飲みも飲んだり!大満足だぜ!」

「あっはっは〜、イノシシって初めて食べたけど美味しいねぇ」

「うお〜・・・なんもかんもがグルグル回っとる〜・・・」

道中ヴィランに遭遇することもなく、一行は無事に宿に着いた。そこまでは良かったのだが、例の猪鍋と地酒の魅力に負けた男三人が見事なまでの暴飲暴食を繰り広げ、結果今現在なかなかひどい体たらくを晒している。

タオはまだ幾分かましな感じだが、お腹はボッコリと膨れ顔も赤い。エクスは慣れないアルコールを摂取したせいかやたらと笑い上戸になっているし、力太郎は身体中に酒が回って大の字にぶっ倒れている。

「全く・・・人がちょっと目を離した隙に、なんなのよこの有り様は〜!」

温泉から戻ってきたレイナはあまりの惨状に頭を抱えた。

「最初はタオ兄だけが飲んでたんですが、酔ってきたタオ兄が2人に強引にお酒を飲ませはじめてですね。で、今に至る感じです」

男衆の惨状に我関せずというふうで、少し離れてよもぎ団子を頬張りながらシェインが状況説明する。

「そういう時は止めなさいよ、もう!」

「すいません。見ていて面白かったのでついつい静観してしまいました」

全く悪びれずにシェインが答える。

「とりあえず三人は明日お説教ね・・・今日はもう寝て明日に備えましょう」

「タオ兄達はどうします?」

「放っておくわよ!」

気付けばいつの間にやら三人が三人ともいびきをかいて熟睡している。レイナではなくとも放っておきたくなる光景だ。

「姉御、あれ」

シェインが換気のために開け放たれていた障子越しに、中庭を指差す。何かと思いそちらに目線を向け、レイナは絶句した。中庭に数体のヴィランが出現し、クルルゥ、クルルゥと鳴き声をあげながらこちらへ向かってきていたのである。

「なんてタイミングなのよもう!しょうがないわシェイン、私たち2人であの第一陣を倒したら、急いであの馬鹿どもを叩き起こすわよ!」

「合点承知です!」

言うが早いか、シェインはロビン・フットとのコネクトを済ませ、ヴィラン達に矢を射かける。その隙にレイナもシェリー・ワルムとのコネクトを果たし、臨戦態勢を整えた。

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