第3話 遭遇

 なにもないまま、5日間が経過した。

 カオステラーの手がかりどころか、ヴィランにも出会っていない。

「やっぱり、いないんじゃないですか?」

 シェインがそういうのも無理はない。

 この想区はいたって安定しているし、混沌があるようには思えない。

「……これから、どうしようか?」

 エクスがそう言ったその時、懐かしい声が響いた。

「見ぃーつけたぁ……♪」

 その声は蛭子ひるこのもの。

 しかし、辺りを見回してもその姿はない。

 そして、見つからない代わりに現れたのは……。

「クルルァ」

 この想区では初遭遇の"ヴィラン"。

「んなっ!?」

 しかも、それは一体どころの話ではなかった。

 突如現れたヴぃランはあっという間に一行を囲っていく。

「お嬢っ!」

 レイナを呼ぶタオの手には、"導きの栞"。


 "導きの栞"というのは、様々な物語があるこの世界のヒーローたちの魂とコネクトしつながり、戦うための力を得る媒介となるもの。


 タオはサムエル記の巨人戦士、ゴリアテの魂とコネクトする。一瞬、光に包まれたタオ。光が収まった時、そこにあるのはゴリアテの姿……。コネクトしたゴリアテタオが、武器を構えていた。


 それにならい、レイナたちも、それぞれコネクトし、戦闘を開始した。



 その、戦闘は、思いもよらぬ終わりを迎えた。

「みなさん、強いんですね」

 突如聞こえたその声は蛭子の声。

 しかし、その声には、聞いた瞬間悪寒がはしるような、冷たい声だった。

の言うとおりだった。……みなさんを、"カオステラー"のもとまで案内してあげます」

 蛭子の"案内"という言葉に、エクスが首をかしげた。

「……どういうこと??」

 なぜ、"カオステラー"のもとまで案内してあげる、なんて言われたのか。その答えを求め、エクスは蛭子に問いかけた。

が言っていたのです。運命から逃げるには、まず貴女方を追い払わなくてはならないと」

 "彼"……それはおそらく"カオステラー"のことだう。

「……そう。でも、それならそのを連れてきなさいよ」

 レイナが言うと、蛭子はすこし考えているようだった。

「そうです。そんな、あからさまな罠にかかりたくないですし。用があるならそちらが来るべきでは?」

 シェインも、レイナに同調する。そんな二人の姿に蛭子はため息をついた。

「……はぁ。じゃあ、5時間後にアマテラスの城で、ということにしてあげましょう。5時間後、とそちらに向かいます」

 そこは、アマテラスの城までそこそこ近い場所。

 アマテラスが"カオステラー"である可能性も考えられるが、レイナはその案を受け入れた。

「いいわよ」

「それでは5時間後に」

 蛭子が去ると、少しだけ生き残っていたヴィランたちも蛭子の後を追うように去っていった。


「お嬢、さっさといこうぜ」

「5時間しかないんですから、はぐれて迷子にならないでくださいよ、姉御」


 その後、何度かレイナがはぐれそうになった。しかし、それはレイナが心配でレイナの後ろを歩いていたエクスとレイナ、二人だけの秘密だ。

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