第2話 運命

 新しい想区についた僕たち。

 そこで出会ったのは蛭子ひるこという神様だった。

 レイナと話をしていたとき、突然「俺が案内してあげよう」と声をかけてきた、謎の神様ひと


 彼の案内のもと、僕らはこの想区でとても偉い神様……アマテラスと会うことができた。

 しかし、アマテラスは僕たちには気にもとめず、蛭子を威圧的な目で睨み、一言だけ言葉を投げかけた。

「……いい加減になさい」

 その声に、僕は鳥肌が立つのを感じたし、他の面々もビクッとしたのが見えた。

 そして、アマテラスは何事もなかったかのように笑顔で僕らに話しかける。

「さて、客人よ。何用でしょう?」

 アマテラスの質問にはレイナが答えた。

「実は……」

 レイナが話したのは僕らの旅の理由。

 運命が決められているこの世界で、その運命を拒絶し、混沌へと導く存在"カオステラー"に取り憑かれてしまった人を止め、想区を"調律"することで想区をもとの姿に……本来の物語へと戻すこと。

 そして、この想区でも、その"カオステラー"のような気配を感じたこと。

 話の最中、アマテラスが蛭子の方を度々見ていたり、蛭子の顔色が悪かったりといくつか気になることはあったが、話は無事に終わった。

 最後に、何か心当たりがないかをタオが聞いたが、アマテラスは何も知らないようだった。

 僕らは、しばらく"カオステラー"がいないかを探る許可を得て、その場をあとにした。



「とりあえず、手がかりはないようね」

「まぁ、地道にやってこうぜ」

 別に手がかりがないなんて珍しいことじゃない。むしろ、手がかりがある方が少ないだろう。

「……一つ聞いてもいい?」

 帰り道では、蛭子もそのまま一緒にいた。そして蛭子が突然口を開いた。どうしたんだろうと彼の顔を見ると、その顔はとても真剣な表情をしていた。

「どうしたんだ?」

 タオが返事をすると、蛭子は少しだけうつむいた。

「……俺は今、少しだけ自分の未来に嫌気がさしている。でも、何もできない」

「そう……。その運命はつらいものなの?」

 レイナの質問に、蛭子は疲れた笑顔を見せた。

「さぁ?そんなの人それぞれの感じかた次第でしょう?」

 蛭子の言葉に「……それは一理ありますね」とシェインが言ったが、レイナは想定外の答えすぎて言葉につまっているようだった。

「……でも、"なにもできない"ならカオステラーである可能性は低いよね」

 僕は、とりあえず蛭子の運命の話からカオステラーの話に変えた。

 ……なんだか、レイナが困っているようだったから。

 ボクのいった言葉は、嘘をついていなければ、っていう前提つきだけど、今回は間違いない気がしている。

「……まぁ、カオステラーがいるのか怪しいって感じるくらい、ヴィランの影が一切ないものね」

 レイナの言葉の通りだ。

 僕たちはまだ、この想区に来てから一度もヴィランと会っていない。

「……カ……ラー……」

 彼が、なにかを呟いたのが聞こえた。けれど、何をいったのかは聞こえなかった。


「……俺はここで」

 彼は突然、別れを切り出した。

 僕らも止める理由はないし、そのまま別れたけれど、僕はこのとき、妙な胸騒ぎがした。

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