第11話 ギフテッドと純米大吟醸

工学部 先輩の研究室


◆男

調子はどうですか


★先輩

楽勝だよ


◆男

すごいですね。急なお願いだったのに


★先輩

単純なゲームだからな。三日もあればできるよ。ただデータがとりづらいな。

対戦ログが残らないとこんなにきついとは。ネットワークに侵入して直接ログをとるわけにもいかんしな



◆男

学内めちゃくちゃにしたのに


★先輩

え?


◆男

え?


★先輩

しかし、君もよくやるね。あの子のためか


◆男

俺としては一刻も早く満足してほしいだけです


★先輩

ただほどほどにしたほうがいい。そのせいで悪いうわさもたっている


◆男

そんなの気にしませんよ


★先輩

君はそうだろうな。ちなみに私の方でそういう情報を流したやつは月初なのに通信制限がかかるようにしておいた。

猫の動画を無制限にダウンロードするんだ。最高だろ?


◆男

悪魔だ......


★先輩

それで? 約束のものは?


◆男

これです。純米大吟醸


★先輩

おお!これがうわさの。この前とは一線を画す高級感だな


◆男

前のはコンビニで売ってるやつですから。で、先輩あの人は


★先輩

彼か? 彼なら今部活中だが? 気にするな。さっそく飲もう


◆男

だめでしょ。というかこの前のでこりました。あの人がいないとこでは先輩、酒飲んじゃダメです


★先輩

おいおい。そりゃあないだろ。だったらこっちも考えがある。こいつを劇弱にチューニングしてやるからな


◆男

鬼だ


★先輩

今度の大会の目玉なんだろう。対人戦優勝者は専用に仕立てた人工知能と戦えるって。

学外にもポスター張ってたのを私は知ってるぞ


◆男


★先輩

大体、ずっと気になっていたんだが。あの時私は何をしたんだ。さっぱり記憶がない。彼も何も言わん。


◆男

あー。学部長はお元気ですか?


★先輩

そういえば最近会ってないな。ずいぶんおとなしくなったと風のうわさで聞くが。それがなにか?


◆男

とにかく彼氏さんが来るまでお預けですから


★先輩

待てるかそんなもの。ようし。こうしよう。

今からこの人工知能と君が戦って、君が負けたらおとなしくそれを渡すんだ


◆男

そういう問題じゃ


★先輩

負けるのが怖いのか


◆男

そんな安い挑発に


★先輩

やっぱりそうじゃないか。あーあ。あの後輩が今じゃこんなざまとはね。残酷だな時の流れってのは


◆男

わかりましたよ! やってやろうじゃないですか。その代わり三回勝負ですからね!


★先輩

いいだろう。受けてたとう。わたしとこの私特製人工知能名付けて「ポケ〇ンマス


◆男

あーーーーーーー!


-----------------------


◆男

よし! まずは一勝。先輩、この程度なんですか。「ポケ〇ンマスター」ってのは


★先輩

真の強者は一戦目に遊ぶと聞いているのでな。こいつもそれに従っているまでだ



----------------------


◆男

負けた、だと


★先輩

だからいったろう。さ、次でラストだ。



---------------------


◆男

おおおおおお!先輩、そいつ完全にこちらの動き読んでくるんですけど!

実は後出しで行動してませんか!? マジで!


★先輩

妙ないいがかりはよしてくれ。さ、勝負はついたな。渡してもらおう。純米大吟醸!


◆男

......やっぱりいやです。この際だから言いますけど、この前は大変だったんですよ!「ちゅぱかぶらちゃん」とかいう人工知能が工学部棟の電子機器全部にクラックしてエロ動画ばらまいたり、不倫メール発掘したりして!


★先輩

エロっ!? 私の「ちゅぱかぶらちゃん」がそんなふしだらなことをするものか!


◆男

不倫メールは?


★先輩

あれはまあ、公然の秘密というかなんというか


◆男

......


★先輩

......


◆男

とにかく酒は渡しません


★先輩

約束は守れっ!


◆男

ぎゃああああああ。あの電気出る棒!


★先輩

ふんっ。そこで見てろ


◆男

あれ? 体が動かない。先輩。これ


★先輩

なに。そのうち元に戻る。あーあー。君にお酌してもらうつもりだったんだが。

まったく残念だ。

ま、手酌というのもオツなものだ。友達も言っていた。かーっ俺ってば通だからと


◆男

(そいつ絶対飲み友達いないだけですよ!)


★先輩

さーて。いただこうかな。うーん。いい香りだ。


◆男

(ちくちょう。このまま見ているしかないのか)


ガチャン!


★先輩

どうしてここに。あ、いや。このそれは


◆男

(彼氏みたいなゴリラさん!)


★先輩

え? 部活が早く終わった? 君のペースでランニングしてたら

ほかの部員全員がぶっ倒れた?


◆男

(この人ラグビー部だったような......?)


★先輩

これはあれだよ。君が来てから飲もうと思ってたさ。もちろん。そうだとも?当たり前だろ?

君との約束だ。それを破る私ではない


◆男

(こんなに慌てる先輩ははじめてだ)


★先輩

だから。な? あれだけはやめてくれ。な? まだ飲んでないんだぞ。あれはあまりにも残酷だろ?

私たちはなんだ? 恋人同士だろ?


◆男

(先輩、先輩が)


★先輩

あーーーーー! 助けてくれーーーー!


◆男

(天井まで高い高いされてる......!)

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闇の深い女の子と酒を飲む短編集 夜見方ルビ @suma_ken

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