第3話
ヴィラン達を打ち倒したが、鉄の少年は姿が見えなかった。
「硝子、その鉄の彼がいない。心当たりはない?」
シェインの問いに硝子は頷いて、シェインの手を引いて洞窟の入り口から入ってすぐの、大きめな岩が半分埋まった場所まで連れてきた。
「硝子?」
シェインが硝子を窺うと、硝子はその岩のそばを掘り返して一つの塊を手に取りシェイン達に見せた。
「硝子、これってもしかして……」
硝子は地面に手に持った塊で男の子の絵を描いた。
みんな「えっ? それで描くの?」と思ったが口には出さなかった。
硝子の持っている塊は鉄の少年なのだという。絵とその鉄の塊を交互に指差したからだ。
「そっか……なら彼は違うね」
「じゃあ発生原因は一体どこに……」
「硝子。心当たりはもうない?」
シェインの言葉に硝子はまた地面に絵を描こうとしたので、慌てて鉄の彼と近くに落ちていた枝を交換してもらってから描いてもらう。
硝子が地面に描いたのは二人の人間。
その一つを黒く塗りつぶしてから硝子は塗りつぶさなかった方を指差した。
「これは、もしかして樹の少年って事?」
硝子はその言葉にこくこくと頷く。
「じゃあ、行ってみるか。何かわかるかもしれない」
「そうだね。でもその前に彼をちゃんと戻しておこう」
エクスは手に持った鉄の彼を元の場所へと戻して埋め直した。
少し悩んだが、埋め終わると祈りを捧げた。
◇
「なあ、硝子。樹の奴は存命なんだろうな?」
「ちょっと、タオ! あなたデリカシーってものは無いの!なんでそんな事口に出せるの?バカだから?」
「だってなお嬢、そんなこと言ってもそこも空振りってこともあるだろ?」
「手がかりが他にないんだから行くべきでしょ。そんなこともわからないの?」
硝子の耳はすでにシェインによって手で塞がれていた。
話は硝子には届かなかったのだろう、可愛らしく小首を傾げている。
「もうそんな話やめておいてよ? これから硝子に手がかりを聞き出したいんだから。もしかしたら直接のつながりがないだけでなにかを知っているかも」
エクスが二人にそう言うと二人は少しの不満があったのだろうが、そこはぐっと押し込んで頷いて見せた。
「悪かったお嬢。確かにデリカシーってもんがなかった俺が悪い」
「ううん、わたしも。不必要に高圧的な物言いになってたわ。ごめんなさい」
それを見てエクスは息を吐き出すと共に微笑んだ。
「じゃあシェイン、硝子に話をしたいんだけどいいかな」
「うん。いいよね、硝子」
シェインの言葉に硝子も頷いてくれたので、エクスは考えながら言葉を紡ぎ出した。
「ありがとう、硝子。……そうだなぁ、今までに……いや、今日はいつもと変わらなかった?」
硝子は首を傾げてみせた。
「そうか。なら、困った事、困っている事って何があったりするかい?」
硝子は今度は反対側に首を傾げる。
「ふふふ、硝子可愛い」
シェインは嬉しさがこみ上げてきていて顔から溢れてしまっています。
「うーん、変だなぁ。どう思う? レイナ、タオ」
「そうね。カオステラーの影響がなさすぎるわ。実際にヴィランが出ている以上、何もないって事はないはずだけど」
「そもそもヴィランはここで何かしているのか? あいつらは物語の崩壊を目論んでいるはずだろ」
「うーん……」
しばらく歩くと硝子が場所にたどり着く前に、タオが気配に気づいて全員の足を止めさせた。
「何かいるぞ、数が多いから多分ヴィランだろう。どうする、また奇襲するか」
幸いここではまだ騒いでいなかったのであちらには気づかれていないようだ。
「硝子、あっちがもしかして目的の場所なの?」
そのシェインのヴィランのいるであろう方向を示した目線と声に、硝子は首を振って否定した。
かわりに指で指し示したのは何もない拓けた土地。
「え? もしかしてまた……?」
その声に反応したわけではないだろうが、ヴィラン達はこちらに気づいてしまったようで騒ぎ声が聞こえてきた。
「おい、奴ら動き出したぜ。このまま黙って周りを囲まれても面白くない。回り込もうとしている数が少ないところから叩こうぜ」
タオのその言葉に全員が駆け出した。
「全員、俺に続け!」
先頭を走るタオが発する声と共に戦端が開かれた。
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