第2話
「無事ですか硝子」
今日のシェインは随分とテンションがおかしい。
「そこは木の根が出っ張っています。気をつけてください硝子」
とても甲斐甲斐しく世話を焼くのだ。
シェインが世話を焼き、話しかける度に硝子の先ほどまで青かった胸のハートはピンク色になっていっている。
「シェイン。その、硝子に話を聞きたいのだけど良いかしら」
「はい、姉御。ヴィランの事ですよね。硝子、さっきの悪さをするヤツらがどこから来ているのか知っていたら教えて欲しいんだ。教えてくれる?」
硝子はコクリと頷くと枝を拾い、地面に絵を描きはじめた。硝子にはどうやら心当たりがあるようだ。
硝子の描くそれは、物語のように右から左へと話がだんだんと進んでいく。
昔々、女の子が一人、森で毎日を過ごしていました。
女の子は踊るのが好きで、優しい風の日やお日様の輝く晴れの日には花や小鳥たちと一緒に踊って過ごしていました。
ある寒さが厳しくなった風の穏やかな日に、少女はよく遊びにいく泉の凍った水の中に女の子を見つけます。
とてもびっくりしましたが興味津々に少女は近づいて、手を振ったり笑いかけてみました。
すると女の子は同じ事をして少女に返事をしてくれたのです。
とても嬉しくなった少女は冬の間、毎日二人で楽しく過ごしました。
女の子は少女と一緒に踊るのがとても好きで、少女も女の子の笑顔が大好きでした。
ところがあるとき泉の氷が溶けてしまうと少女は女の子と会えなくなってしまいました。
その日から毎日少女は女の子に会いたいとガラスの涙を瞳からポロポロと零していました。
そういているうちに気づいたのです。
そうだ、会えないのなら自分から会いに行けば良いのだと。
少女は住んでいた森を離れ、女の子を探しに出かけました。
少女は女の子を求めて歩き続けました。
それは険しい山道を越えての大変な道。
ずっとずっと遠くの森まで来たところで、樹の下で疲れ果てて少女はその場で横になって眠りはじめてしまいました。
しばらくして少女は耳元に何かを感じて目を覚ますとそこには真っ黒と木目の入った人の形をしたものがあり、びっくりしてしまいました。
驚く少女を気遣うように、優しく微笑み彼らは声をかけて来ます。
「君はどこから来たの?」
「僕らとは違う体をしているね。一体どうしてこんなところで?」
二人の笑顔で少し落ち着いた少女は訳を伝えます。
すると二人は力になるよと少女を手伝ってくれると言ってくれました。
それから三人で旅を始めました。
黒い身体をしているのは鉄の少年。
力が強くて、一人で何でもこなしてしまいます。
木目の入った身体をしているのは樹の少年。
とても器用で何でも作ってしまいます。
三人の旅は一人の時よりも全然疲れないし、とても楽しいと少女は感じました。
そこで硝子は絵を描くのをやめて、少年の絵を枝で指した。
急なことで硝子がなにを言いたいのかが四人にはわからない。
「ええと、硝子。この子は鉄の男の子だよね」
そのシェインの言葉に硝子は頷く。
「で、この子が……あ、もしかして硝子、心当たりのあるヴィランがやってくる場所にこの子が関係があるの?」
シェインのその言葉に硝子はもう一度頷いた。
「え? この男の子のいるところからヴィランがやってくるとか? えっと、硝子」
レイナの問いに硝子は少し溜めた後に一回頷いた。
「そうなの……何かあったのかしら」
「ここで考えててもわからねぇよ。とりあえず行ってみようぜ、その鉄の奴のところに」
「そうだね。硝子、悪いんだけど近くまで案内してもらっても良いかな」
エクスの言葉に硝子は頷いてくれた。
「ごめんね硝子。硝子の事はシェインが必ず守るからね」
シェインが硝子の頭を撫でながら決心を口にした。
◇
「みんな、硝子がもうそろそろって」
硝子に案内してもらい泉から離れると
、一行が向かったのは切り立った岩肌が目立つ崖の麓。
崩落など起こらなそうな無骨な岩肌が二十メートルほどの高さに聳えている。
シェインが手を繋ぐ硝子が示すのは先にある洞窟の入り口だった。
「あそこか?硝子」
タオの言葉に硝子は頷いてみせた。
「みんな、静かに。見て、少し見えにくいところにヴィランがいるよ。まだ気づかれてないみたい」
「それでその鉄の奴はどこにいるんだ? エクス、見えるか?」
「いや、見つからない。とにかく見つかる前に奇襲をかけよう。硝子はここでシェインと待っていて」
エクスのその言葉に硝子はふるふると首を振る。
頑張るよ!とポーズをとった。
「硝子……。うん、シェインが守るからね。一緒に頑張ろう!」
「でも!」
「エクス。本人がそう言ってるのよ。それにさっきだって戦えてたから大丈夫よ。ね、シェイン」
「はい、姉御」
「う……うん。わかったよ、硝子。でも危なかったら逃げるんだよ」
「ははっ、俺たちが守りゃ良いのさ。硝子はもとよりな」
「あんまりのんびりしてると見つかっちゃうわ、いくわよ!」
そうして全員で洞窟の入り口にたむろするヴィランへと襲撃をかけた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます