リミナリティ・トラベラーズ
天宮詩音(虚ろな星屑)
第1話 道化の紹介
ふぃー、やれやれ船旅も楽じゃない、余りに暇でしょうがない。
あら?どうしました其処の少年、ワタクシめに何か?
ほう、ほう、なるほどこの奇妙な服装やトンチキな言動をしているのはなぜかって?
いいでしょう、この退屈な船旅にワタクシめのつまらない人生を添えて差し上げます
まず、この青い帽子ですが、とある男にあこがれてしているのですよ。
その人物はハッタ―、しがない帽子屋です。
聞く人が聞けばピンと来るのでしょうが、残念ながら少年はその聞く人ではなかった様子。
ザ・マッド・ハッターという呼称でよく知られていますね。
まあそれはいいでしょう、さて、このステキファッションについてですが。
まあ特に理由なんてありませんとも、もし理由があったとすればそれこそ天の思し召し!
まあ本質は少年の見た通り、ただの変人の類ですよ私は。
言うならばリミナリティ、境界で踊る道化。
ワタクシなんて世界にいなくても十分世界は回すことができる。
ああなんてスバラシイ。素晴らしすぎて反吐が出る。
所詮ワタクシは傍観者、常にこの生きづらい世界を見つめるだけ。
時にオモシロオカシク?時に深刻にそして残酷に!
誰かの物語をただ瞳に映す伽藍洞!
これこそがカオス、これこそが虚無!
何物でもあるということは何物でもないということ。
ペタペタペタペタ美談ばかりを不細工にくっつけた吟遊詩人たちとは違って。
フラフラフラフラ正義ばかりを馬鹿みたいに追い続ける民衆たちとも違って。
ガタガタガタガタ戯言ばかり愚かにも抜かし偏重する貴族たちとさえ違って。
クライシスまで一直線に。
ラフメイクまでは最短で。
この時計の針が止まる時まで嘲り続けましょう。
さてと、このトンチキな言動は私の本心。
普通の人間みたいにまともな言葉で本心を偽る技術なんて持ち合わせてはいない。
ええ、正々堂々卑怯極まりない方法で悪逆の限りを尽くして応対するべく。
カオスな脳内をそのままダイレクトに器用な口先に繋いでいるんですよ。
正論や感情論?そんなものどうでもいいじゃあありませんか。
何が正論かそうでないかを決めるのは常に自分、現実なんかに即している必要はどこにもない。
人間同士の馴れ合いなんてものをわざわざ眺めるのは理解しがたいからです。
ただの押し付け合いじゃありませんかあんなもの。
無意識に割を食う人間が常に産まれる環境なんて壊してしまえばいいのに何でしないんですかね?
最大数の幸福なんて求めても意味あるんですか?
その選択が最小の不幸であるとは限らないのに。
足並みを合わせる?みんなで仲良く?
いやあ、その中に含まれているんですかね、異端者は。
自らの過ちは如何にして正すべきでしょう?
集団の過ちは如何にして直すべきでしょう?
理解の外側を許容することはそんなに難しいのでしょうか?
自分以外の誰かが何時か、どこかでは努力しているのかもしれないと思うのは?
自分一人は世界という存在にどのような価値があるのか他人が推し量ることなどできるのでしょうか?
架け橋になろうだなんて殊勝なことは考えていませんが。
時折悩むんですよねぇ。
人の心は複雑怪奇、飛び出るトンデモにいちいち対応してはいられないのですが。
論理の破綻、秩序の崩壊大いに結構。
世界の裏側を揶揄し続ければ、この身はいつか消え去るでしょう。
けれどその時までは、絶対に世界に唾を吐き続けると決めているのです。
ワタクシの一人語りはここでおしまい。
さて、見えてきましたね。
この退屈な船旅も間もなく終わるのでしょう。
これから始まるものは一体何でしょう?
心躍る冒険活劇?
お涙頂戴ラブロマンス?
それとも血肉沸き踊る戦記?
いやいやそれとも、と、まあいいや。
それではまたいつかお会いしましょう。
リミナリティ・トラベラーズ 天宮詩音(虚ろな星屑) @AmamiyaSionn
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