第26話 作戦

「なんだよあれ!何なんだよあれ!!」タリスは神戸新聞杯きのうのレースでアーカイブにやられ、さらにせっかくの100%コンスタントスピードをうまく発揮できなかったことにまだ怒っていた。


「どうするッスか?師匠?」と山下調教厩務員はタリスをなだめながら諏訪調教師に聞いた。


「はぁ~…今日は調教にならん…」諏訪はため息をつき、「タリス、昨日のことじゃが…あれくらいは普通にある!」とさらに言った。


 タリスはバッと諏訪のほうを向き、反感を買った。

「!?はああぁあぁああ?!

 ふざけんなよ!!じーさんの作戦通りに内にいて体力の消耗をできるだけを抑える競馬をしたらこの様だよ!最初から外回ればよかった…!!」


「だからレース前に言ったじゃろ…『体力の消耗を抑える競馬をするタリスユーロスターは2400mがギリギリで菊花賞3000mは走れない』と周りに思わせる、とな…。

 そうすれば神戸新聞杯きのうのようながっちりとしたマークから外れるはずじゃ!」と諏訪はあくまでも菊花賞を目標としていることを主張した。


「……………。」タリスは落ち着き、軽く目を反らした。


「報道陣には神戸新聞杯の結果次第で天皇賞(秋)に出走する可能性もあると言っているし……山下!インターネットの反応はどうなっとる?」諏訪はパソコンは使えるが、ネットに関しては全く無知なので、ネットに詳しい(と思っている)山下に聞いた。


「えーっと…そう…ッスね~…。

『タリスニイヨン限界www』

『馬体重+10とかwwただのデブwww』

『100%wwwwwww一定wwwww速度wwwwwwwwwwwwwwwwww』

『菊花プレタ一強確定』

『菊花賞プレタポルテ一強になってつまんなくなったから凱旋門賞から菊花賞のローテーションでアブソリュートの二強』

『それだとアブソ一強だわwwww』

 …とかッスかね~。」山下は携帯を片手に某ネット掲示板を閲覧しながら淡々と言い、タリスは静かにブチ切れた。


「まぁ…いい気はしないが順調じゃな…。

 これで菊花賞当日は、マークが緩くなるはずじゃ!

 それじゃあ昨日の疲れ(怒り)もあるようだし……山下、タリスをゆっくり休ませておけ…!明日はいつも通りにするぞ!」と諏訪は言い、「了解ッス!」と山下は返した。



――神戸新聞杯から一週間後の日曜日。世間は世界最強馬決定戦『凱旋門賞』の話題で持ちきりだった。

―日本時間午後11時、日本中アブソリュートの勝利を願っていた。タリスは「興味ない」と言っておきながら、なんだかんだで諏訪厩舎全員で中継を観ていた。(小牧は自宅でおやすみ中)



!!!!!わああああああああああああああああああああああああ!!!!!



 世界中で歓声が上がった。


「さて…寝るか……。」タリスは凱旋門賞をしっかり観たが特に感想はないようだ。


「明日の調教はいつも通り6時に始めるぞ。」と諏訪は言い、山下は了解し、タリスは驚いた。


「了解ッス!」

「はぁああ!!?いつも通りって3時に起きろって言ってんの!?」


「何じゃ、無理だと言うんか?

 何なら今からでもいいんじゃよ??」


「イヤ……

 ……………。

 のぉおおぉおおおぉおおお!!!」

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