第22話 日本ダービー―それぞれの思い―
(あー…
…セレーネちゃんとドリアードちゃんがいてー…。…アリエスちゃんにエリーゼちゃんもいるしー…。しかも…客馬蔵東京本店No.1嬢のローズマリーちゃんもいるー…。
……………。
…………。
………。
……。
…。
…あれ…?…ここどこだ…?…ああ……そうだそうだ……俺が生まれ育った
…そうか……もう…そんな時期か……。
種付けの時間だぁあああぁああああぁあああぁああぁああぁあああ!!!!!
ふっふ~ん!初体験の相手は誰かな~?…ひょこッ!
あ!クリオネちゃんだ~!!新馬戦以来だ!!さーってと…!
ハハハハハ!
ハハハハ!
ハハハ!
ハハ!
ハ!)
……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………(一瞬の間)。
「!!!!!は!!!!!
やば!気失ってた!
残りは!!?……200…。
……………ふぅ。
このまま逃げ切ってやる!!!!!」
(全力か……辛いし、痛いし、苦しいし、本当に嫌なことばかりだけど……楽しい!
もっとだ!もっと前に進め!!勝ちたい!!
……………。
僕は初めて…勝ちたいと思った!!!)小牧は嬉しそうだ。
「くそっ!くそっ!!くそっ!!!
(競馬学校時代、俺が1番で小牧が2番だった。…だが、小牧は全力を出していなかった。相手をなめているわけではなく、自分に自信がなかったからだ。そして…一歩引き、2番手におさまっていた。全力を出していないのに2番手だ!もし…全力を出したらどこまで行くんだろうと思って、煽った…!!
今、奴は明らかに全力を出している!自信がなく、おどおどしている奴が、自信に満ちあふれている顔をしている!
お前…今、最ッッッ高に輝いているぜ!!!
だからだ!!全力を出して
もし、周防の騎乗馬がアブソではなかったら、それ以上の差が生まれていただろうと思えるくらい周防は不甲斐無さと焦りを感じた。
「…ハァ…ハァ…
(あかん…
いやや…目立たんし、カッコ悪いやん…。
……けど……疲れた……。
…もう……いいや………。)」プレタが意識を失いそうな時――
すうううぅぅぅ………
「プレタ―――――ァアアアア!!!!!
がんばれ―――――ぇええええ!!!!!」――少女が叫んだ。
(
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
※ワイは茨城県の白石牧場で生まれ育った。
ワイが最初に発した言葉は「んなアホか!」やったらしい。
エセか本場かわからんが、なんでやろかワイもよーしらんが関西弁を話す。周りの人や馬に関西弁を話せる者がおらんのに……。
―約2年後、ワイは世界的有名なオカマ『よっしー』(本名不明)に買われ、『プレタポルテ』と名付けられた。その後、関東の美浦トレーニングセンターの
「すみません。うちの娘が今日行きたい、とうるさくて…。」と田村騎手。
「いや、いいよ。うちはいつでも大歓迎だからさ!
久しぶり結ちゃん!私のこと覚えているかな?」と菊池調教師。
「…えっと……。」
「そっか~もう6年も前だしね~。」
(いや覚えてるし!6年でこんなにババアになってる思ってなくて、会った瞬間、誰かわかんなかったし!
何?アラサー
「結ちゃんは将来、騎手になるんだっけ?」と菊池。
「もちろん!お父さんより先にGⅠとりますから!!(少なくともあんたよりは超える!)」
菊池調教師は元諏訪直樹厩舎所属騎手。重賞未勝利で、成績は下から数えた方が早い。
騎手生活10年を境に引退。その後、婚活しようと思っていたが、直樹調教師に調教師の道を勧められ、ムスーッとなりつつも調教師になった。
直樹と凛は交際関係があったとかなかったとかの噂がある。
「ちょっと待て!お前が騎手になってGⅠ騎乗できるまでって考えると…早くても5年かかるぞ!それまでお父さんGⅠ勝てない前提かよ!!」と田村騎手。
「だって…騎手生活20何年なのにGⅠ1個もとってないんだよ?無理じゃない?」
「ぐはっ!」アラフォー男子死亡。
ブロロロロロロロロロロ……
「ん?馬運車?」
「ああ…今日、入厩する馬が来たみたいだ。」と菊池は説明した。
結は馬運車の扉を開けた。
「はぁ~やっと着いたぁ…」とプレタは長旅で疲れていた。
「(はぁー…尾花栗毛だ…珍しいなぁ…)
初めまして!私、田村結っていいます!あなたの名前は?」
「ワイの名前はプレタポルテとええます。」
「…?関西弁?
「いや…ワイは茨城出身や!何で関西弁を話すのかはワイにもわからん!」
「え!?なんで!?
……………あ。なんでやねん!」
「「ハハハ」」
月日は流れ―
12月のとある日、厩舎見学ツアー。
「あれ?今、女性騎手…調教助手っていました?」とツアー客の一人が結がプレタに乗っているのを見て、菊池に聞いた。
「ああ…あの子どっちでもないのよ。まだ14歳だし。」
「え!?14歳!?いいんですか乗せちゃって?」
「いいのいいの…ただの乗馬体験だし、あの子将来、騎手目指しているし。」
「へぇ~…じゃあ将来期待の女性騎手だ!」
「ハハハ…だねぇ~。
(本格的な調教はまだだけど、そもそも何で乗れんの!?別に教えたわけじゃないのにたった一カ月で乗れてるし!!
走っている馬に乗るのは、全身の筋肉とバランスが必要で、素人がたった一カ月で乗れるわけないのに!!妬ましい!)」
結とプレタがたまたまツアー客に近づいた。それを見計らって一人の客がパシャリとカメラを撮った。
「う!!?何や!!?目が!!!」
「うわあああ!!!」プレタはカメラのフラッシュに驚き咄嗟に立ち上がり、結はプレタから落ちた。
「な、何や…今の光!?」プレタはふらつき、鈍い音とともに「があああ!!!」と結はさっきよりひどい声が出した。
「ゆ!結!!?今の…結か!!?
ワ、ワイが踏んづけたんか!??」結はプレタの足元でうずくまっていた。
「ちょっとあんた何やってんの!!」と菊池は写真を撮った客の胸ぐらを掴んでそう言った。
「いや、ちょっと写真を撮ろうと……。」
「写真はいいけどフラッシュ禁止だって最初に言ったでしょ!!」菊池はそう言い放ちプレタと結の方に近寄った。
「プレタ!結!大丈夫!??」
「ワイは大丈夫やけど、結が!」
「結!!」
その後、救急車が厩舎に到着し、結を茨城県立病院へ―
腰椎圧迫骨折と診断され、3,4週間入院した。
退院後、あの事故がトラウマとなり、結はプレタに乗らなくなった。
そして日が経つたび、結とプレタは会わなくなっていた。
「結…今、どうしとるんやろなぁ……。」とプレタはさみしがっていた。
「ほら!昔の女のことは忘れて、前向きに生きなさい!」と菊池。
「なんだそのアドバイス!!おかしいやろ!!」
「ほらほら!調教始めるよ!最近、成績不振なんだから!」
「うぐぅっ…!わ、わかってるわ……!」
「じゃあ…今日は少し強めにお願いね…!」と菊池は調教助手に頼んだ。
「……………。
…で?会わないの?結。」プレタが調教しに行ったことを確認し、結のいる方向を向かずにそう言った。
「私と会ったら気まずい空気になるじゃん……。」
「…けど……会わない方がもっとつらいよ…。
……………。
…あれ?いなくなってる…。」
―青葉賞前日。プレタが明日に備え寝ようとした時―
(プレタ…頑張って……。)とボソッと声が聞こえた。
「……結!!!」とプレタは叫び、馬房を出ようとしたが―
「あああぁああぁああああ!!!柵が邪魔で出られへん!!!」
※あの時、結かわからなかったけど、その声のおかげで大差勝ちできたんだ!
だから……今の声も―――。※
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「―…レタ!
―…プレタ!
…プレタ!!」と田村騎手がプレタの首に左手を添えて呼びかけ、プレタは「ハッ!」と気がついた。
「どうした?大丈夫か?」と田村はさらに呼びかけた。
「あ…あぁ…。
……………。
結の声が聞こえた……。」とプレタ。
「え!?空耳じゃないの!??」
「なんでやねん!!
そこは『娘が応援してるのか…頑張らないとな!』とかやないの!??」
「うーん…ちょっと前までは出会い頭に『死ね』って言っていたのが、最近じゃあ『キモッ』か無視されるんだよ……。お父さん不憫…。
……………。
…そうか……頑張らないとな…!」
「せや…頑張らなあかん!
ここで頑張らなかったら…かっこ悪いやろが!!!!!」
プレタの体が切れた。
――ペガサス・ザ・ゴールド!!!
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