第12話 “絶対”の名を持つ馬

 この一年を戦い抜き!この一年に選ばれた馬だけが出走できるレース!―グランプリ有馬記念!!―――――!!!!!の!!!!!前に行われる中山第4レース芝1600mで行われる2歳新馬のレースがまもなく始まります!

 実況は私!杉川 清和!!

 そして解説は!この作品の作者!ジャンゴでお届けします!!


「有馬記念じゃねえのかよ!!」


 あなたは黙っていてください!


―各馬順調にゲート入りしております!

 最後に16番『アクセルホッパー』が入り!

 体勢完了!スタートしました!!

 ややばらつきのあるスタートですが!

 先行争い!押して押して行ったのは6番『アイノセンシ』!並んで9番『カメレオン』!さらに12番『オートミール』!13番『ツインポニーテール』も前に行きました!

 1馬身離れてこのレースダントツの1番人気1.1倍の5番『アブソリュート』がここにいます!

 半馬身内に3番『ホシクズキララ』!外に8番『ファーストフード』!

 1馬身半離れて15番『ザグリーン』!

 2,3馬身離れて1番『カヤノコスモ』!7番『ビリオンアイズ』!10番『クロノキングダム』!11番『エイショウマスク』!2番『ココアショコラ』!4番『シュバイン』!14番『ロックブレーカー』!16番『アクセルホッパー』!と!後方はかなり固まっています!


 さあ!600の標識を通過!先頭はアブソリュート!!アブソリュートが2馬身!いや3馬身!いや!ドンドン加速しているぞ!!鞍上の周防すおう 清二せいじ騎手はまだ持ったままだ!!


(は?ここで加速!?)

(狂ったのか?)

(先週の朝日杯を勝ったタリスユーロスターの真似か?)

と出走馬たちは驚いた。


 さあ!最後の直線!先頭はアブソリュート!!カヤノコスモとビリオンアイズが上がっているが差は広がっていく一方だ!!

 10馬身!11馬身!!12馬身!!!まだまだ広がっていく!!!

――ゴールイン!!!!!

 アブソリュートが15,6馬身ほどの差をつけて圧倒的な競馬でデビューしました!!!




「予想以上の強さじゃったな。」と中山競馬場のスタンド3階にあるキングシートで諏訪調教師は観戦していた。


「どうだった、俺の馬は?」と長身で諏訪と同い年の幼なじみでアブソリュートの馬主であり、アブソリュートが生まれ育った巽牧場の牧場長、たつみ 武志たけし氏が声をかけてきた。


「なぜお前がいるんじゃ!ここは指定席の人以外立ち入り禁止じゃぞ!」


「馬主の力をなめるなよ。」


「馬主でも入れんぞ!!」


「…で、どうだった?」と巽氏は再度聞いてきた。


「この時期の2歳馬で新馬戦じゃからこの差で決着したが、まだまだ未熟じゃ。」

と諏訪は答えた。


「相変わらず辛口だな。」と巽氏はややため息を吐いた。


「これからどんどん強くなって頂点を極める可能性が今、最も高い馬じゃろう。

 タリスがいなかったら、(クラシック)3冠確実と言われてたじゃろうな。」


「…ん?ちょっと待て!タリスユーロスター、クラシック出るのか!?あいつ短距離馬だろ!?」と巽氏は疑問に思った。


「(タリスの馬主の)佐藤と話したが、皐月賞までは様子見じゃと…。

 走れそうじゃったらそのままクラシック路線、きつそうじゃったらスプリント・マイル路線にする予定じゃ。

 佐藤が言うには、『いやー、昔、ミホノブルボンっていう馬がいたじゃん?そいつみたいに短距離馬でも鍛えればクラシック走れるかなー、って。』じゃと…。」


「まあ、いいんじゃない。走らせないとわからないし、お前の調教はスパルタだし。

 まぁ、それでも…アブソが勝つけどな!」と巽氏は諏訪に少し煽りを入れた。

 

「言ってろ!」と諏訪は少し笑った。


「俺はそろそろ表彰式に行ってくるわ。」と巽氏はその場を去った。





―――1月、すべての馬が1つ歳をとった。 




―同月、とある日。諏訪厩舎の中は荷物でいっぱいだった。


「何これ!?俺がGⅠ獲った次の日みたいになってるんだけど!!

 今日、何かあったっけ?」とタリスは驚いていた。


「今日というより、昨日だけどね。

 昨日、JRA賞表彰式でタリスが最優秀2歳牡馬に表彰されたんだよ!」と山下は説明した。


「俺、出てないよ!」とタリス。


「あー、っと……JRA賞表彰式って、なぜか受賞した馬は出席できないんだよなぁ…。形上、馬主が表彰状と記念品を受け取るんだけど…。

 …んで、これが表彰状と記念品。」と山下。


「えぇ………こんなものより牝馬おんなが欲しい……。」


「…いや、無理だろ。」


「全く、お前さんは相変わらずふしだらなことばかり考えておるな…。」と諏訪はタリスに呆れていた。


「は?男だったら女のことを考えるのは当たり前だろ?

 じいさんは考えたことないのかよ?」とタリス。


「わしは佐知子さとこのことしか考えておらん!」


「佐知子って誰?」


「…えっと……言っていいんスかね、師匠?」と山下は困った表情をした。


 諏訪は「いいぞ。」とだけ言った。


「…えっと……佐知子さんは師匠の奥さんで、3年前に他界したんだよね……。」


「……………そっか。」とタリスはすべてを察した。


「そんなことより、タリス!朝日杯や最優秀2歳牡馬になったからって浮かれていないじゃろうな!

 3歳戦はより激しい戦いになる!特にクラシックはな!

 2歳で活躍できなかった馬が3歳になって急激に成長する馬もいるんじゃ!!気を引き締めて精進しろよ!!」と諏訪は喝を入れた。


「当たり前だ!!クラシック3冠くらいとらないと日本中の…いや、世界中の牝馬おんなと種付けできねえじゃねえか!!

 だからこの勢いでクラシック3冠とって!引退した後!世界中の牝馬おんなたちを種付けするんだぁあああぁああぁああああぁあああぁああ!!!!!」


「じゃから!!そんなふしだらなことで3冠なんかとれるかぁああぁあああぁああああぁあああぁあああ!!!!!」


 諏訪はアレを切り取るための道具をポケットから取り出した。


「だから何でそれ持ってるんだよ!!!

―――――

――――

―――

――

―のぉおおぉおおおおぉおおぉおおおおぉおおおお!!!!!」


「待たんかコラァアアァアアアァアアアアァアアァアアア!!!!!」


タリスと諏訪は外へ出て行ってしまった。

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