第11話 朝日杯フューチュリティステークスー祝勝会、キャバクラにてー

 タリスユーロスターだ!!!タリスユーロスターが先頭!!!

――ゴールイン!!!!!

 タリスユーロスターが2歳王者の栄冠を手にしました!!!!!


「―――っしゃあああ!!!!!」




「やった!!!マジか!!!GⅠ勝った!!!」と山下は興奮して喜んだ。


「まぁ、そうじゃな。」と諏訪調教師は落ち着いていた。


「いや師匠!GⅠッスよ!!GⅠ!!もっと喜びましょうよ!!!」


「タイムが1:34.0と平均タイムじゃ。こんなところでうかうかしていられん!」


「今だけ!今だけでいいッスから喜びましょうよ!

 俺もさすがに明日になれば熱冷めていると思うッスから。」




「―――っしゃあああ!!!

 まず、GⅠ1個とったあああ!!!」とタリスが戻ってきた。


「やったなタリス!!」と山下はタリスを抱いた。


 小牧は即座に降りてどこかへ走り去ってしまった。


「え!?ちょっ!?小牧さん!!?」と山下。


「山下!!小牧を追いかけろ!!!」と諏訪は声を張り上げた。


「りょ、了解ッス。」と山下はすかさず追いかけた。




「―――内藤さん。内藤さん。まだ勝利ジョッキーインタビューが始まらないのでしょうか。

 午後4時で番組が終わってしまうんですけど。あと、5分ほどしかないんですけど。」と番組MCが女子アナに聞いた。


「…えっと…現在、小牧騎手は検量室に引きこもり中とのことで、スタッフが説得を試みています。」


「え!?何か事件とかですか!?」


「…いえ…小牧騎手はとても恥ずかしがり屋で人前に立つのは苦手な方でして……。

 ……………あ!来ました。厩舎の人でしょうか?警察官が犯人を逮捕したかのように連れてきました。」


 山下が小牧の手を縄で縛って連れてきた。




「―――それでは、勝利ジョッキーインタビュー!

 小牧大希騎手、おめでとうございます!」


「……………は、はぃ………。」小牧は小刻みに震えていた。


「重賞初勝利、GⅠ初勝利ということで、今の気持ちを一言!」


「ごめんなさい!!」と小牧は頭を下げた。


「え!?なぜ謝るんですか!?」


「………えっと、あの……僕みたいな人が………その…………勝ってはいけない人が勝ってしまって、申し訳ありませんでした!!」と一度上げた頭をまた下げた。


「いえ、ドンドン勝ってください。」と女子アナは笑顔で答えた。


「…ふぇ?………え…………あの…………え?」小牧は驚きを隠せなかった。


「小牧騎手!この大歓声を聴いてください。」


 わあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!


「やったな!!」

「GⅠおめでとう!!」

「きゃー!!かっこいい!!」

「ふざけんなよ(笑)!!てめーいつも負けてたろうが!!」

「てめーのせいで馬券はずしただろうが(笑)!!」


 罵声は少しあったがみんな笑っていた。


「え…………えっと…………えっと……。」小牧はオロオロしながら涙目になっていた。


 そして、山下もタリスも普段笑わない諏訪も小牧の方を見ながら笑っていた。


「………えっと…………えっと……あ、ありがとう………ございます……!」小牧は涙を流した。


「えっと、これ以上は勝利ジョッキーインタビューを続けられなそうなので、終わりとさせていただきます。

 小牧大希騎手でした。」


 タリスユーロスター陣営は阪神競馬場を後にしようとしたが―――


「次は………!!次はぜってぇえ負けねぇえぞ!!

 覚えていやがれ!!タリスユーロスタアアアァアアァアアアァアアア!!!」とジーニアスブレインは叫んだ。


「あー………えーっと……忘れとく。」タリスは去った。




「さて…!これから祝勝会をしようか!」と一人の男がタリスユーロスター陣営に割って入ってきた。


「お久しぶりッス!」と山下は挨拶し、小牧はお辞儀をした。


「誰!?」とタリスは少し驚いた。


「おいおいタリス。俺のこと忘れたのかよ~。」


「(…チク…タク…チク…タク…チク…タク…チク…タク…チーン!)誰?」とタリス。


「なんで一瞬、わかったような顔したんだよ!!

 俺だよ!俺!馬主の佐藤公平だよ!もう今日で会ったの3回目だぞ!

 1回目はセリ市の時!2回目はお義父さんの厩舎に入厩した時!…で、3回目が今!

 …っていうか、馬主の顔と名前は覚えておけよ!!」と佐藤氏はやれやれのポーズをとった。


「待て!!佐藤!お前に『お義父さん』と言われるのが嫌じゃと何度言ったらわかるんじゃ!!」と諏訪は怒った。

「いや、お義父さん。まだ加奈子かなこさんとの結婚を認めていないんですか?」


「娘との結婚は認めとるが、お義父さんと言われるのが嫌なんじゃ!!

 わしはお前を育てた覚えはない!!!

 せめて『諏訪さん』か『隆博さん』じゃろうが!!」


「そんなこと言わないでくださいよ~。お義父さん。」


「このクソガキが!!!」


「俺はもう35ですぅ~。」


「…はやく祝勝会いきましょう……。」と山下はあきれ顔で言った。




 陣営はキャバクラに行った。


「え……マジで?」とタリスは驚いていた。


「マジで。」と佐藤氏は答えた。


「本当にいいの!?」


「いいよ。GⅠ勝ったし。」




―――客馬蔵キャバクラ


 人間のキャバクラとは違い、馬が主に接待をする全国チェーン店。

 人間と馬の従業員の比率は約1:1。

 ほとんどの店が競馬場、馬券場の近くに構えている。

 入店時に、競馬・牧場関係の身分証明書の提示か当日のはずれ馬券の提示で入店可。

 予約は可能だが競馬・牧場関係の人のみ。

 接待の内容は人間のキャバクラと差はほぼないが、料金は約2倍ほど。

 今回、タリスユーロスター陣営が行う『祝勝会』は出走予定レース週の木曜日までに要予約。料金は1着賞金の3%(朝日杯フューチュリティステークスの1着賞金は7000万円なので料金は210万円)。祝勝会の予約キャンセル料はレースに関わらず一律50万円。

 金額は高いがそれ相応のおもてなしをする客馬蔵だが、唯一の欠点は店内が獣臭い。ゆえに一般の人はあまり入店しない。

 なぜ獣臭いのか、理由はこのにおいはフェロモンだから。風営法上、性的愛撫は禁止だがにおいは別。性に刺激を与えるが、人間で例えると香水にあたるので問題は無い。競馬・牧場関係の人たちがこの匂いを求めて入店する人は少なくない。


 最後に原作者ジャンゴから一言。

「こんなキャバクラは嫌だ!(大喜利)」


 あなたは黙っていてください!




―――陣営が客馬蔵に到着。


「お待ちしておりました。佐藤様。どうぞこちらへ。」と男性店員が案内した。

 扉を開けた瞬間、小牧と山下は鼻をつまみ、タリスはアヘ顔になった。


「申し訳ございませんが、当店では鼻をつまむ等の行為を禁止とさせていただいております。

 できれば自然な行動をしていただきたいのですが…。」と男性店員は注意を促した。


「「わ、わかりました………。」」


 席に着き、豪華な食事、豪華な酒、タリスは古馬ではないので馬専用ノンアルコールビール。そして、接待を受けた。


「すごーい。GⅠ勝っちゃうなんて!」

「中継見たわよ。圧倒的だったじゃない!」とタリスの両側にセレーネとドリアードが相手をしていた。


「いやあ、それほどでもあるけどな!でへへ!」タリスは長い鼻の下を長くしていた。ちなみに、2着との差は2馬身差。


「あら?顔真っ赤にして、もう酔っちゃったの?」と、みほが小牧を心配そうに聞いてきた。


「……………。」小牧は黙ってうつむいていた。


「ああ、小牧さん人見知りで、こういう店初めてじゃないかな?俺も初めてだけど。

 というか、お姉さんたちこの店のにおいきつくない?」と山下は言った。


「まあ、最初はきつかったけど、今は慣れたっていうか。」

「うんうん。けどぉ、服ににおいが染みちゃってぇ、落ちなかったりするんだよねぇ。」と、りかも言った。


 諏訪はみさきに日頃の愚痴を聞いてもらい、佐藤氏は他のお客様に「今日は俺のおごりだああ!!!」と祝勝会に巻き込んでいた。

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