第10話 朝日杯フューチュリティステークス―2歳王者―

―朝日杯フューチュリティステークス当日、タリスユーロスターと山下はパドックを巡回していた。

 山下はGⅠだからかスーツを着て巡回していた。


「フフ…似合わなっ!」とタリス。


「うるせぇな!スーツとか成人式以来だから着慣れてないからそういう風に見えるだけだし!」


「…?

 成人式って何?」


「…そっか、知らないか。」




 16頭中1番人気は3戦3勝中の『ジーニアスブレイン』1.7倍


「ヒャッッッハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」


 2番人気は同じく3戦3勝で前走GⅢ小倉2歳ステークスを制した『エスプレッソカフェ』5.7倍


 3番人気は新馬戦3着からの未勝利戦、GⅡ京王杯2歳ステークスを制した『シュラ』8.0倍


 同じく3番人気新馬戦、GⅢ東京スポーツ杯2歳ステークスを制した『ゲイボルグ』8.0倍


 タリスユーロスターは5番人気12.3倍とやや低めの評価を受けた。



 次代のスター候補が一堂に会する2歳王者決定戦!―朝日杯フューチュリティステークス!

 世代最初の栄冠を手にするのは果たして!どの馬でしょうか!

 実況は私!杉川 清和!!

 そして解説は………


「私だ!」


 あなたは黙っていてください!


―さあ、スターターがスタンドカーに上がって!

ファッ!?ンファーレです!



 ファッ!?ファッ!?ファッ!?ファッ!?ファッ!?ファッ!?ファッ!?ファッ!?ファッ!?ファッ!?ファッ!?ファッ!?ファッ!?ファッ!?ファッー!?ファッ!!?

 ファッ!?ファッ!?ファッ!?ファッ!?ファッ!?ファッ!?ファッ!?ファッ!?ファッ!?ファファファファファファファー!?

 ファッー!?ファッ!!?ファッ!?ファッー!?ファッ!!?

 ファッー!?ファッ!!?ファッ!?ファッ!!?ファッ!!?ファッ!!?

 ファッー!?ファファファッ!!?ファッ!?ファファファッ!!?

 ファッ!?ファッ!?ファッ!?ファッー!!?




―各馬順調にゲート入りしております!

 最後に16番『シマウマ』が入り!

 体勢完了!スタートしました!!

 ややばらつきていますが!『ジーニアスブレイン』は好スタートを切りました!

 先頭は飛ばした!飛ばした!8番『ゲイボルグ』!

 3番『ジーニアスブレイン』もついて行った!

 3馬身、4馬身離れて6番『チェンジオブペース』!10番『エンドロール』!12番『アクティブレイド』!15番『ロイヤルストレート』!が固まって!

 2馬身離れて4番『モラルマイヤー』!5番『エスプレッソカフェ』!11番『カヤノパーティ』!

 1馬身離れて1番『キタコレルミエール』!7番『シュラ』!13番『セブンスウォー』!16番『シマウマ』!

 後方には2番『タリスユーロスター』!9番『カヤノゴールド』!14番『ギラティナプラチナ』!

 となっております!


「ほら小牧、そろそろ仕掛けるタイミングだぞ!」とタリス。


「……………。」小牧は手綱をしっかりと持ちながら手が震えていた。


「おい小牧!800の標識過ぎたじゃねぇか!!」


「……………。」それでも小牧は手綱をしっかりと持っていた。


「おい小牧!!」


「……………。」


「(ブチ切れ!!!)

 いいからとっとと鞭を入れろ!!!!!」


「……………っ。」小牧はやけくそ気味に鞭を入れた。


―――コンスタントスピード!!!


 タリスが叫んだからか各馬警戒した。


(…何………だと………!

 今、叫んだのはタリスユーロスターかああ!!

 馬鹿な!!このタイミングでの鞭は、必殺技しかない!!

 …あ…ありえない!天才の俺でさえ習得していないのに!なぜ!!

 ……………。ふぅぅ。落ち着け。

 まず、必殺技じゃなく、ハッタリの可能性が高い。

 なぜなら、前走のデイリー杯から1カ月ほどしか期間がなかったからだ。その期間での必殺技の習得は俺以上の天才でなければありえない。そして存在しない!!

 さらに、それより前から必殺技の調教をし、このレースのためにとっておいていたとも考えにくい。

 なぜならぁ、前走でそのような素振りを見せなかったからだぁ。

 つまり、前走の敗戦から必殺技の習得を始めたのが濃厚だろうなぁ!

 だとしたら、仮にハッタリじゃなく本当に必殺技だったとしても、1カ月では習得しきれていないはず!

 つまり!中途半端な必殺技を使った諸刃の剣!賭けにでたのだ!!

 …今、奴との差は11,12馬身差ほどかぁぁ。声がここまで届くくらい叫んだんだ、皆も俺と同じくらい警戒するだろうなぁぁ。

 落ち着いて、来たる時まで足をためてやるぜぇぇ! ヒャッハァァ!)とジーニアスブレインは思った。


 が、現在、ジーニアスブレインは「2番手で先行しているのに足をためる」と思ってしまったことにクスッと笑った。


 さあ!第4コーナーを曲がり600の標識を通過し!先頭はジーニアスブレインだ!ジーニアスブレインが半馬身離して先頭だ!!


「ん~~~~~?どうしたんだぁあ?ゲイボルグ?

 息があがっているように見えるがぁあ?」とジーニアスブレイン。


「は?別に。」


「じゃあ、何で加速もせず、2番手で待機してた俺が先頭に立ってるんだぁあん?」


「今、下り坂だから勝手に加速したんだろ。」


「ヴァかか!話を聞いてなかったのか!

 俺は加速してないって言ったんだ!!

 それに俺のスキル『登山下山アップ&ダウンザヒル』はどんな坂でも平坦な道のように走ることができるスキル!!勝手に加速する訳ないだろうが!!!

 つまり!お前が勝手に減速したんだろうが!!ヴァか!!」


「…………ッ。」


 各馬まもなく直線に入ります!!


(……………?

 おかしぃぃ…なぜ、タリスユーロスターはいまだに来ないんだぁぁ?

 内側にはいない…か……。外は………ッチ!ゲイボルグが邪魔で見えない!

 ……………。

 考えられるのは6つ

 1つ、必殺技が発動していない。

 2つ、ハッタリだった。

 3つ、警戒した他馬がタリスユーロスターの邪魔をした。

 4つ、必殺技が発動してた場合、発動とともに超加速から徐々に減速する必殺技。

 5つ、ある一定のスピードを維持する必殺技。

 6つ、徐々に加速する必殺技。

 現実味があるのは、1,3,5,6だなぁぁ。2つ目はよほどのヴァかじゃない限りありえないなぁぁ。4つ目はそんな超高等必殺技を2歳馬に教えるのは調教師として失格だからありえない。

 まぁ、どちらにせよもうすぐ直線!ここで一気に決める!!

 さらに!残り200mから高低差約2mの登り坂がある!ここで必ず減速する!俺のスキルなら減速しないからここで差が開くはずだ!!

 ヒャァッッハアアア!!!)


 次の瞬間、ジーニアスブレインは殺気を感じた。


 直線に入り!!ジーニアスブレインが先頭!!ゲイボルグはきついか!!大外からタリスユーロスターがやってきた!!


(…な!?は、速い!!徐々に加速する必殺技だったか!!

――逃げ切る!!!)


 ゲイボルグは馬郡の中だ!!内のシュラが食い下がっているが!!外からタリスユーロスターが追い込んで坂を上る!!!ジーニアスブレインとの差は2馬身ほどだ!!!


「ヒャッッッハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!

 ……………。

 …………は。

 はぁああ!!!?」

(なぜだ!!!なぜ奴は減速しないんだ!!なぜ加速もしてないんだ!!

 まさか!一定のスピードを維持する必殺技だったのか!!?わからない!!!

 ま、まずい!!このペースだと!!!)


 坂を上り切り!!!タリスユーロスターがジーニアスブレインと並んだ!!!

 タリスユーロスターの勢いはいいぞ!!!


「ば、ヴァかな!!!

 あ、ありえない!俺は天才なんだ!!!こんなところで負けるはずがないんだ!!!

 ありえない!!ありえない!!!ありえない!!!!!」


「いや、知らねぇよ。

 お前の理論だと、こんなところで負けるお前は天才じゃなかったってことじゃねぇの?」とタリスは答えた。


「――……!!!!!」ジーニアスブレインは声にならない声を出した。


 次の瞬間、タリスの息があがり一気に減速した。


(や、やばい息が!

 けど……もうすぐゴールだ!!)


 タリスユーロスターだ!!!タリスユーロスターが先頭!!!

――ゴールイン!!!!!

 タリスユーロスターが2歳王者の栄冠を手にしました!!!!!


「―――っしゃあああ!!!!!」とタリスは息がたえたえながらも喜びを表した。

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