第7話 次なる挑戦

 前走、中1週で使ったのとコースレコードをたたき出したこともあり、タリスユーロスターは疲弊し、いつもの調教タイムが出せなくなっていた。

 諏訪調教師はタリスを放牧に出さず、厩舎で休養をとっていた。

 それに伴い、諏訪はタリスにつぼマッサージをした。


「いてててててててててて!!!!!

 ちょ!!痛いんだけど!!!」


「えーっと確か、ここが血行促進のつぼじゃったかな?」


「いててててててててててて!!!!!

 本当にこれで良くなるのかよ!!?」


「何を言う、わしの厩舎に入厩していた馬たちは、みんなこれを受けて元気になっていたぞ。

 えーっと、ここが性欲抑制のつぼかな?」


「そんなつぼがあるのかよ!!!

 いててててててててててて!!!!!」


 後日、タリスが元気になり、次のレースに向けてのミーティングと調教を再開した。




「よし、次のレースじゃが、GⅡデイリー杯2歳ステークスに出走する!」


「「ええええええええええ!!!!!」」と山下と小牧は驚いた。

 そして、タリスはなぜ二人が驚いているのかわからなかった。


「いやいや、無理ッスよ。いきなりGⅡに挑むなんて…。」と山下は言った。


「…僕も……ぃきなり…は…ちょっと………………。

………………500万下…の…レースにした方が………………。」と小牧はぼそぼそ言った。


「何言ってるの二人とも!

 俺、この前のレースでコースレコード出したんだよ!

 GⅡどころかGⅠでもいけるだろ!!何ためらってるの!?」とタリスは言い放った。


「タリスの言うとおりじゃ。何をためらっているのじゃ?」と諏訪は問いかけた。


「いや、なんというか、タリスの能力的には大丈夫だと思うんスけど…

 この厩舎ってGⅡとか滅多に出さないじゃないッスか。大丈夫ッスかね?」と山下は心配そうに答えた。


「そうか、お前さん、自分の管理している馬が重賞に出走するのは初めてじゃったな。怖いのか?」と諏訪はあおった。


「なっ………そんなわけないじゃないッスか!」と山下は即否定した。


「あと小牧、500万下に出そうがデイリー杯に出そうが、わしはタリスが勝ってくれると思っとる!

 同じ勝利じゃったら格上のデイリー杯に出した方がいいじゃろ!」


「……………で……でも…………。」


「もちろん競馬に絶対はないからな、必ずしも勝つとは限らないが…

 デイリー杯はGⅡじゃ、仮に2着になっても本賞金がもらえる。

 そうなれば、GⅠ朝日杯フューチュリティステークス出走できる幅が広がるんじゃ!」


「………………は…ぃ…………。」

「何言ってるんだよ!じいさん!!

 2着にはぜってえ!ならねえ!から!!!

 次のレース、絶対に勝つ!!!」とタリスは小牧の声を打ち消すように張り上げて言った。


「よし!その粋じゃ!デイリー杯2歳ステークスを勝つぞ!!」と諏訪は士気を上げた。


「「おう!!!」」

「お、おう………。」


「今回ももちろん!目標タイムを切ったら、キャバクラに連れていってくれるよな!?」とタリスは確認した。それに対して諏訪は苦悩の表情をみせた。


「……う~~~~む……。…わかった。いいじゃろう。連れていってやる。

 デイリー杯は1600mのレースじゃ。…じゃから、目標タイムは1:32.3とする!」


「……………。」


 山下は即座にスマホで調べ、そのタイムはまたしても日本レコードだった。

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