Lv16「不死王と発明エルフ④~究極の消費者~」

最近、アトリに振り回されて、人生がジェットコースターの勢いで狂っているなと、ワルキュラは思った。

今、自分がいるのは、アトリの研究所だ。

エルフ耳の研究員達が日夜集い、新しい技術を次々と開発している。

だが、肝心の発明品が問題だった。

必要だから発明するのではなく、とりあえず思いつきで作って、その後の運用は全部放り投げてくるのが最大の問題点にも程があった。


「ま、また、何か発明したのかっ……!?

アトリ師匠っ……!」


ワルキュラは、骨の喉を震わせて、目の前の天然そうなエルフ娘に問いかける。

そうすると、無邪気な返事が返ってきた。


「前回、ワルキュラに言われて大反省したのです~

今回の発明なら、全ての問題を解決できるのですよ~」


エルフ耳がピョコピョコ動いて可愛いなぁと、ワルキュラは現実逃避した。

よくよく考えてみれば、発明品の運用方法を考えるのは、発明家の仕事ではない。

必要だから、研究して発明した場合は別だが、些細なアイデアが、大ヒット商品の数々を産む事もあるのだ。

例えば、弱い接着力を持つ接着剤。

普通なら、何の役にも立たないが『簡単に付けて剥がせる』という特性を利用して、付箋という商品が誕生した。

付箋は、メモ代わりに書いて、壁やノートなどの好きな場所に貼り、要らなくなったら簡単に剥がす事できる紙だ。

その利便性のおかげで、職場、学校、いたずら用として人気を誇っている。

きっと、アトリの発明も、運用次第では、役に立つに違いな――


「国力とは、即ち、物を生産して、流通させ、そこから税金を取る事で発生する代物なのです!

つまり!商品を消費しまくる存在がいれば、それだけで経済が活性化して、国力がアップして最強って事なのですよ!」


「ふむ、ふむ……つまり、どういう事だ?」ワルキュラは急に不安になった。


「商品を大量消費しまくるロボットを作ったのです!」


アトリが元気よく叫ぶと、部屋の扉が開き、手が大量に生えた丸いロボットが出てきた。

手のそれぞれにポテトチップス、縞々パンツ、テレビゲーム、テニスラケットなどの道具を持っていて、纏まりが全くない。

『それは』ムカツク感じのチャラ男の声で、話しかけてきた。


「ワルキュラ様wwwサーセンwwww

俺wwwwアトリ様が作ったwwww消費者様ロボットですwwww

商品は一回使ったら捨てるわwwwwwww

衝動買い楽しいwwwwww

食べ物を食わないけど、どんどん捨てようwwwww

アトリ様のwwww下着ケースにあった縞々パンツもどんどん捨てようwwww」


それはもう――労働者の労力を犠牲に、無駄に贅沢する、お客様だった。

次々と手に持っている商品を捨て、新しい商品を部屋の向こうから持ってくる。

人類やアンデットの叡智の結晶が無残にも、次々と捨てられて、まるでゴミ山のようだ。


「大量消費は正義wwwww

資本主義バンジャーイwwwww」


「これで経済が活性化して、失業者が居なくなるのですよー。

労働者も大喜びなのですー」


いや、労働者が激怒して、反乱起こして国が終わるだろと、ワルキュラは言いたくなった。

ロボットを満足させるために、生者と死者が頑張って働いてくれるはずもない。

自分が労働者なら、職場でストライキ起こす自信が950%ほどあった。


「こいつの無駄遣いに使う……予算はどうするんだ?」


「もちろん税金なのです~

お札をバンバン刷って欲しいのですよ~」 


「この発明も封印指定な」


「うはwwwww無駄な買い物してたらwwww俺がゴミ扱いされたwwwww

なんでwwwwwなんでwwwwwww」


ロボットは存在そのものを否定された事で、人工知能がぶっ壊れて回線がショートした。白い煙が頭から出ている。

アトリの美しい顔が、絶望に染まった。


「そんなー!?ひどいのですー!

折角、皆の役に立つロボットを作ったのにー!」


そんなエルフ娘の両肩に、優しく、骨の手を置く。

諭すような口調でワルキュラは言った。


「……アトリ師匠は疲れているんだ。

今日は、モフモフな狐に変身してやるから、それで癒されるんだっ……!」


「やったー!

可愛い狐をお持ち帰りなのです~!」






おしまい




~ボツネタ~

この日、ワルキュラは人類……いや、全宇宙を人知れず救った。

生物や、アンデットが、ロボットの奴隷になる未来が回避されたのだ。



ワルキュラ「いや、俺がロボットを、物理で全部ぶっ壊すから、そんな未来ありえんだろ……」


【内政チート】「他国からの援軍は当てにならない !」軍事

http://suliruku.blogspot.jp/2016/07/blog-post.html

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