Lv15「不死王と、北風と、太陽」
北風と、太陽は、今日も競い合っていました。
両者とも、もちろん、名前通りの存在です。
北風は、惑星の北側からやってくる超大型台風。
太陽は、核融合やっているお日様の事です。
会話しているように見えるのは、気のせいです。
物は喋りません。
「へへへへへへっ!
俺が本気を出せばっ!
星ごと消し飛ぶ雑魚なっ!風さんがっ!俺に挑戦するのぜ?
笑ってしまうのぜ!
蟻が象に挑むようなものなのぜ!」
太陽の挑発に、北風は大笑いしながら返答しました。
「直接的な破壊力は、私の方が上よ!
今日は私の勝利ね!むっきゃきゃっ!」
「じゃ!今回の試合はっ!あの都市を吹き飛ばした方が勝利って事でいいのぜ!
先手を譲るのぜ!」
「わかったわ!」
太陽が、ビーム光線で指し示したのは――ワルキュラが留学中の属国です。属国だから国名はどうでも良いんです。
先手必勝が大好きな北風は、やる気を出して、大気を超高速回転させました。
エネルギーに換算すると……不謹慎で有り触れた例えになりますが、広島に投下された原子爆弾10万発ほどのエネルギーになります。
自然の猛威は、人類の科学力すら超越しているのです。
「今日は私の勝利よぉー!
このカッタートルネードでっ!都市ごと切り刻んであげるわぁー!」
今回の勝負は北風の大勝利――かと思われましたが、その行動は帝国の天気予報士に、完璧なまでに予測されていました。
属国には、巨大な骸骨なワルキュラが、美味しい線香を片手に待ち構えています。
北風の攻撃を許せば、畑を心配して確認しにやってくる農民たちが、大量に用水路に流されて死ぬから、それを阻止する覚悟です。
ですが、北風とワルキュラのサイズを比べれば、ゾウとミジンコほどのサイズがあります。
北風は勝利を確信して笑いました。もう、笑いすぎて死にそうです。
「むきゃっきゃっ!矮小な身でっ!風の覇王に戦いを挑むなんて無謀ねっ!
死体は死体に!塵は塵に帰るべきだわぁー!
スーパーウルトラトルネードアタック!超大回転クラッシュー!」
無駄に長い必殺技が、属国に炸裂しそうになる寸前――
「エナジードレイン!」
ワルキュラが、普通に魔法を使いました。
原子爆弾10万発ほどのエネルギーが、栓が開いたプールのように吸収されていきます。
北風は、エネルギーをどんどん吸われすぎて、800kmサイズの巨体を維持できません。
「そ、そんな馬鹿なぁぁぁぁぁ!!!むきゃー!?」
700km、400km、200km……どんどん小さくなっていきます。
最後には、綺麗さっぱり消滅し、真っ青な青空が天空に広がりました。とっても綺麗ですね。
農家の皆の生活は、こうして守られたのです。
「どうしたのぜ!北風さん!
返事をするのぜ!」
太陽の叫びに、誰も返事を返しません。
代わりに返事をしたのは、ワルキュラでした。
「ふぅ……これで、用水路に流される、農家の叔父さんが減るはずだ……。
俺の世間の評価もアップアップだな」
「こ、この化物がぁぁぁぁ!!許さないのぜぇぇぇぇ!!!
よくも小さい塵粒の分際でぇぇぇぇ!!
偉大なる大自然にっ!喧嘩を売ったのぜぇぇぇ!!」
太陽さんは、喧嘩仲間の仇を取ろうと、激しく核融合します。
どうやら、膨大な熱エネルギーで、星そのものを熱して、百年ほどかけて、生物の大絶滅時代を到来させるつもりのようです。怖いですね。
「むぅ……太陽が暑いのだろうか?
このままでは、作物が枯れて、農家の叔父さん達が経営難で自殺してしまう!」
「これでお前らは終わりなのぜぇぇぇぇ!!」
「エナジードレイン!」
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」
太陽さんを殺す訳には行かなかったので、エネルギーを少し吸い取って半殺しにしました。
ワルキュラは満足そうに、隣にいるクラスメイトの狐娘に自慢します。
「キーニャン。
俺は世界を救ったぞ」
「もっふぅ?」
「台風を消滅させて、太陽の活動を少し抑えたのだ」
(やっぱり駄目だ、この人……精神が狂っているよぉ……。
幾ら、悪の帝王でも、そんな事ができる訳ないじゃないですかぁー)
おしまい
【内政チート】 「交流送電システムで、電力を長距離輸送してチートする!」20世紀
http://suliruku.blogspot.jp/2016/06/20_29.html
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