Lv13「不死王と発明エルフ②~え?キャベツ?~」

キャベツを土に返す命令を下した後、ワルキュラは皇后のルビーとイチャイチャして英気を養った。

愛があれば、骸骨は生きていける。

おかげで、罪のないキャベツを、問答無用で処分した罪悪感を忘れられそう――


「報告するのを忘れていた発明があるのです~」


英気を養って宮殿に戻った途端、エルフ娘がやってきた。

魔法開発を担当するアトリだ。緑色の妖精みたいなドレスを着ている。

ワルキュラは、内心、戦慄しながら問い返す。


「ア、アトリ師匠……な、何の発明を忘れていたんだ……?」


「説明するより、宮殿の裏庭に行って見た方が、分かりやすい発明なのです。

こっちに来て欲しいのですよ~」


そう言って、アトリは通路を歩く。ワルキュラもその後を追い、宮殿の裏側へと向かった。

裏玄関を出ると――その先には広大な庭があり、その一角に小さなキャベツ畑がある。

緑色の葉っぱが美しい。帝国中に流通しているキャベツとよく似ていた。


「ふむ……キャベツを発明したというオチか?」


「よく分かったのです~。

私が魔法を使って、いっぱいいっぱい改良した超特製キャベツなのですよ~。

とっても美味しくてデリシャスなのです~」


ワルキュラ「なるほど、魔法で味を改良して商品価値を高めたのか。

さすがは、アトリ師匠だな……」


「いえいえ、それだけじゃないのです。

あのキャベツを、よぉーく見て欲しいのです~」


アトリの美しい手が、キャベツを指し示す。

この時――ようやく違和感に気づいた。

裏庭は狭いとはいえ、大量の草木が植えてある。

なのに、虫の存在感がほとんどない。

辛うじて、蟻の行列が存在感を放っているだけだ。

蟻の行き先は勿論――生命力に満ち溢れたキャベツさん。甘い匂いをばら撒いて、虫を誘導している。


「グルドウガァァァァ!!」

「ホンギャァァァァァァ!ホンギャァァァァ!!」


キャベツから、無数の触手が生えて、蟻をバリッ!ボリッ!と食べていた。

ワルキュラは口を半開きにして、ポカーンと呆然する。

なにあれ、キャベツ?

いや、キャベツの姿をしたモンスターだと、理解せざる負えなかった。

こんなクリーチャーを作り出した張本人なエルフ娘は、自身の発明を見て誇らしげに、豊かな胸を反らして――


「私の作ったキャベツにはっ!

なんとっ!害虫を自分で食べて栄養にする機能があるのです!

水が足りない時は、自力で歩いて川まで行ってくれるから、低コストで量産できて最強なのです~!」


「……が、害虫の定義は?」


「近づいてくる小さな生き物なら、何でも食べるのですよ?」


「こんなものを流通させる気だったのか!?」


「しかもっ!なぜかっ!あのキャベツは野生動物に荒らされないのですよ!

だから、どんな状況でも安定した量を収穫できてお得なのです!」


「誰が食べるんだ!こんなクリーチャー!?」


ワルキュラがツッコミをいれると、アトリは不思議そうな天然顔で――


「え、でも……人間たちは美味しい美味しいって食べてますよ?

一年前くらいから量産して、今年は大豊作だったのです」


「す、既に流通しているだとっ……!?

な、何か副作用があったりするんじゃ……?」


「あんまり人体実験してないから、分からないのですよー。

どんな食べ物にも毒はあるのです~。

薬にも毒にもならない食べ物なんて、存在する価値がないのですよ~」


「とりあえず、封印指定」


「そんなー!?

農業省も認めた野菜なんですよ!?

『魔法の事はよく分からないが、天才だ!アトリ様!』って言ってくれたのです!」


「もしも、突然変異して、キャベツが巨大化してみろ?

どうなると思う?」


「はぅ?

……確かに少し危険なような……?

でも、そういう苦難を乗り越えてこそ、発明のやり甲斐があるのですよ~」


そう言って、アトリはニパァー、と朗らかな笑みを見せた。

とっても愛らしい反応だったが、ワルキュラは即座に、現在のキャベツ問題の元凶はこれだと気づき、異空間から衛星電話を取り出して、番号を打ち込み、通話ボタンをポチッとな。


「俺だ!ワルキュラだ!

今すぐ、国軍をだせ!

アトリが配布したキャベツは、根こそぎ燃やせ!

理由だと?

そんなもんは、現物を見れば分かる!」


必死に命令を、国全体に下すワルキュラを他所に、アトリが――


「次の発明を思いついたのです!

野菜の加工場で労働する野菜さんとか、愛らしくて素敵だなぁと思うのですよ!

ミキサーに、自分から突入するジャガイモとか、シュールで良いと思うのです!」




~~~~~~~


ボツネタなオチ





ワルキュラ「犠牲者が出てないといいのだが……こういう時は狐娘を見て、癒されよう……」


キーニャン「もっふふ、今年のキャベツは中々に良い味です。もっふふ」


ワルキュラ「」


キーニャン「もっふぅ?」


ワルキュラ「それを食べる事を禁ずる!

今すぐ捨てろ!」


キーニャン(きゃ、キャベツを畑で潰したり、食べるのを禁止にしたり、どれだけキャベツが嫌いな大魔王なんですか!?

ま、まさかっ……!

キャベツには不思議なパワーがあって、それを独占するためにワルキュラ様は工作しているんじゃっ……?)

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