Lv4「不死王と、桃太郎」

むかし~むかし~、とある砂漠に、エルフのお爺さんと、お婆さんが住んでいました。

お爺さんは、働くために街へ。

エルフ娘で、ピチピチギャルなお婆さんは、衣服を洗濯するために、川へと行きました。

そこで、衣服の黒い汚れを、ゴシゴシッと、木製の洗濯板で落とそうと努力します。

何時間もかかる重労働に、お婆さんは「洗濯機が欲しいんだよー、わからないよー」 と悔しそうに愚痴りました。

すると、どうでしょう。

川の上流から、恐怖の帝王ワルキュラ様が、ドドンっ!ドンッ!ザザーン!というラスボスっぽい音とともに、流れてきました。とっても巨大な骸骨です。桃っぽい形状の船に乗っています。

それを見て、お婆さんは気軽に話しかけました。見かけは若くてもロリなBBAだから、最高権力者相手でも恐怖しません。

丸太ような太い神経の持ち主なんです。


「ワルキュラ様~。

税金を安くして欲しいんだよー。

わかるねー?

このままじゃ洗濯機を買えないんだよー。

夫の安月給じゃ、手が届かないよ~」


その陳情にワルキュラは、辛そうに言い返しました。


「すまぬっ……!これ以上、税金を安くしようにもっ……!

色んな団体と、たくさん協議しないといけないのだっ……!

利害の調整って難しいっ……!人生が嫌になってくるっ……!」


「わからないよー。

洗濯機、高すぎるんだねー。

夫の給料5年分とか酷いんだよー」


「た、大量生産すれば、もっと安くなるはずだ……!

それまで待って欲しい……!

量産体制が整うまで、電化製品は高いのだっ……!」


お婆さんは、若い手足を必死に駆使して、走りながら、ワルキュラの乗る船と、併走します。

最高権力者と会話できる、貴重な機会を逃したくないからです。


「ワルキュラ様~」


「どうしたのだっ……!」


「どうして、川を流れているの~?」


「一年間っ……!学生になりたいと言ったらっ……!

頭を川で冷やさなきゃっ……!と王妃に言われたからっ……!

流れてるっ……!俺はなんて情けない男なんだっ……!人生やり直したいっ……!リライフしたいっ……!」


「わからないよー」


そのままワルキュラの身体は、桃っぽい船とともに、川下へと流れて行きました。

そして、エルフのお婆さんは、ふと、気づいたのです。

この話を、本にすれば売れるんじゃね?と。

川から、何かが流れてくるという時点で、インパクトがありまくりです。

ちょうど夫が、出版社の編集者だから、頼み込めば何とかなるでしょう。


「わかるんだねー、この話はきっとヒットするよー」


……お婆さんが書いた物語の名前は『モモ・タ・ロ・ウ』

巨大な桃から生まれたエルフの美少年が、絶対支配の能力を使って、ハーレムやって、悪の帝王ワルキュラを倒す、そんな物語です。

言論の自由が認められているから、ワルキュラを批判したり、悪役にしても、弾圧されません。




こうしてお婆さんは――高級すぎる洗濯機を手に入れ、幸せに暮らしましたとさ。





めでたし、めでたし。



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ワルキュラ「モモ・タ・ロ・ウという物語が流行しているようだな……とっても気になる……」



側近「はい、買ってきました(やべぇー、終盤は全部検閲しないと渡せない内容だぁー。

いや、序盤からワルキュラ殺す!って書いてあるから見せられねぇー!)」



ワルキュラ(ほとんどのページが破かれて読めない……

この国の庶民は……どんな粗悪な読書文化を歩んでいるんだっ……!)

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