第4話

細い入り組んだ道を進んで行くと、徐々に教会に近づいて行った。教会も目前に迫るなか、クリムは足を止め立ち止まった。

もう目前だと言うのに止まるので何があるのか、エクスは訊き一歩前へ出る。

「どうしたの?」

「この先から一本道になって、さっきヴィランが沢山いた道になってるの」

今居る道から繋がる大通りにはヴィランが徘徊をしていた。先程よりは数が少ないものの、メガヴィランもいる。

その様子を、レイナ、タオ、シェインも確認する。

「お嬢、どうする?このまま行くか」

その問いに、レイナは少し唸り考える。

大通りはレイナが思っていたよりヴィランが少なかったが、強力なメガヴィランが数匹居る。

そんな中、向かって行って上手く教会までたどり着ければいいのだが、進んで噴水広場の時の様にヴィランが大所帯で押し寄せてくるかもしれない。そうなれば、今度は逃げ場ない一本道。

だが、早くしなければこの想区はカオステラーとヴィランよって消滅してしまう。町の人のほとんどがヴィランとなっている今、時間が限られてくる。

「…このまま行くわ。まだ、数が少ない今のうちに教会まで一気に進む」

「うん。分かった」

「了解です。姐御」

「じゃあ、行くとしますか」

大通りへとタオとシェインが進んでくと、クリムも続いて行くと思ったが立ち止まったままだった。

一、二番手で戦闘に突っ込んでいたクリムが動かないでいた。

「クリム、無理してるんだったら休んで。僕たちだけでも戦えるから」

「大丈夫。私から手伝わしてって言ったんだから、最後まで戦うから、ね。それに、私の運命を邪魔してる奴をもうすぐ仕返しできるから、それまでは頑張るよ」

そう言うと、クリムは剣を取った。そんなクリムと、エクスはレイナと共にタオたちの後を追いかけた。

大通りには幽霊の様なゴーストヴィラン。そして大型の天使の様な、鳥の様な羽を持つメガ・ハーピィがいた。

激戦にもなりそうなヴィランの数と種類に気をしめて、ヒーローの魂とコネクトする。



倒して教会に近づくにつれ、メガ・ヴィランの数が増えて来る。まるで教会を守っている様だった。その先にカオステラー居るのを確信させるかのようだった。

教会前にたどり着くと、そこは聖域と言うかのようにヴィランの姿は無かった。悪い者を寄せ付けない様な不思議な空気があるような綺麗な場所。

リーン、ゴーン。リーン、ゴーン。

と、響く鐘の音は心に響き渡る様な清浄な音を奏で、まるでここにたどり着いたことに祝福してくれる様だ。

その鐘の音は戦っていたエクス達の気を抜き、自然と一息ついていた。

「この先にカオステラーが居るかもしれないんだよね」

「ええ。でも、これだけのヴィランが居たのだから必ず居るはずよ」

レイナの言葉にエクスはゴクリと唾を飲み込み、抜けた気を入れ直すとクリムの方を見た。少し前から様子がおかしいから、心配なる。

「それにしても、ヴィランの数多かったね」

大丈夫と訊いたところで、大丈夫だよと言う返事が返ってくるのが分かっているエクスは、少しでも気がまぎれる様に別の話を持ち掛ける。

「うん。そうだね」

「この町に居たあれだけの人が…」

「たぶん人だけじゃなく、悪魔もヴィランにされてたと思う。人よりも悪魔の方が多から」

淡々と言うその言葉には、何も気持ちが伝わってこなかった。感情を上手く表せないぶん、声のトーンでクリムは多少気持ちを出表していた。だけれどそれが無く、無機質で無感情なものだった。

その感情の無い声で、エクス達は沈黙した。

「この先に居る、カオステラーってのを倒せばこの異常は収まるのよね」

クリムはレイナに確認を取るように尋ねる。

その声は沈黙を作った無機質な声ではなく、多少感情のこもった声だった。

「そうよ。そのカオステラーを倒せば元通りに戻るの」

その簡潔な答えを聞くと、クリムは一つ大きく息を吐くと一人歩き出した。

教会の入口へ向かって、剣を抜きながら、コツコツと足音を鳴らしながら、何も気取られないで、静かにエクス達の間を通り抜けて行った。

「…先に行くね」

と、一言だけ言いギギッと重たげな音を立てる教会の扉を開けクリムは一人、中に入って行った。

その流暢な一連の行動が唐突に思えたエクス達は、呆気にとられていた。

クリムの姿が教会の奥に消えて行くと、バタンと扉は音を立てて閉まった。扉閉まる大きな音で、エクスは「ハッ」と気付いた。

この想区の主役である彼女を一人でカオステラーの所へ向かわせてしまったと。僕は何をしていたんだと。

「クリム!」

そう、彼女の名前を教会に向かって発するが、時は既に遅く彼女はカオステラーの居るであろう教会の中に居る。

「あとを追いかけないと」

エクスは言うと同時に体が動いて教会へと走っていた。

「彼女の『運命の書』が書き換えられたら、本当に想区が消滅してしまうかもしれない」

「ああ、早くしないとこれはヤバいぞ」

「行きます」

少し急いたレイナの声が焦りを運び、タオやシェインもうかうかしてられないと、エクスの後に続いて教会へと走った。


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