はじめてのせいばい

まだかなぁ……。

人が集まる交差点、

大衆の面前で犯罪者をボコボコにすれば

ネットでその噂はすぐに広がり俺は世界で唯一の超人としてその名を轟かせるのだフフフ。


妄想で時間を潰してるとおっさんが

スリをやらかしたのを発見した。


「やりやがったな犯罪者!

 スリじゃ少し役不足だがまぁいい!」


俺は待機場所のビルの壁を蹴り交差点のスリめがけて矢の如く降下する。


「全力だ!喰らえ!」


降り注ぐ拳の雨レインブロー!!】


勢いのままに拳を乱打させながら一直線にスリへ突っ込む。


パカァァァン!

頭蓋骨骨のボールが砕けた音がした後血とスリの脳が降った。


少し考えればわかることだった。

車より速く硬いパンチで人が死なないわけがないと。


「うわぁぁぁぁぁ!!!」


「キャァァァァァ!!」


「おえぇぇぇぇ!!」


俺の悲鳴をかき消すように大衆が叫び出す。

あたりを見るとみんな吐いている。

その中には写真を取っている者もいる。


「やっちまったよ……人を殺しておいてヒー

 ローもくそもない。俺は……人殺しの化物

 になったんだ……」


事件の罪悪感と今後の不安は俺が超人であることの無敵感がかき消してくれた気がした。


(は、早く逃げないと!)


即死だったであろうスリを病院に運ぶ必要なんてない。

俺は全力で逃亡した。


(そもそもスリも悪い。人の物を奪うという

 ことは人の思い出も奪うことなんだ。あの

 サイフが誰かの形見だったらどうするんだ

 人間のクズめ!)


(よく考えたら正当化できたじゃないか!

 そうだ…。まだいける!まだいける!まだ

 ダークヒーローにはなれる!そもそもこの

 黒いコスチュームはダークヒーロー向きだ

 ったんだよ!)


その瞬間自分が人を殺したことをすぐ忘れてしまっていたことに気付いた。


ゾゾッ


悪寒がした。


(そうだ、俺は1人の人生を奪ったんだ…。

 でもスリも悪いんだ。スリが悪い。)


俺は深く考えるのをやめて自宅のドアを開けた。


「明日からは俺が犯罪抑止力として日本を

 守るんだ。なんだ、まだちゃんとヒーロー

 じゃないか。ははははははははは」


「ダークヒーロー刺助、見参!なんちゃって

 ふはははははははははははははは」

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変身ヒーローになったはずだった 鹿野プフ @KanoPufu

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