第14話 疑念
2度目の使用は、半信半疑でクラスの花瓶をわざと割って試してみた。
誰もいない朝の教室。
ただ手をかざすだけでは戻らない。
誰かが、入ってきたらどうしよう…そんな焦りがでてくる。
心臓の鼓動が早く…大きくなる…。
廊下を歩いてくる足音…近づいてくる……!
「おはよう」
日直の子が教室へ入ってきた。
「おはよう…」
花瓶は元通りに戻っている、水も零れていない。
今、思えば…最初の頃は、ストレスが発動の鍵になっていたように感じる。
「どうしよう…」
この気持ちがトリガーになっていたはずだ。
僕は、それから様々なモノを治した…最初は治す、直す、だと思っていた。
怪我を治す。
物を直す。
戻すということに気づいたのは…もっと後の事…。
慣れてくると、ストレスは絶対条件ではなくなっていた。
「出来る」
という絶対の自信…それが当たり前だと素直に信じられる。
文字通りだ。
自分を信じる…。
簡単だった…当時は。
子供だったから奇異な現象を疑いもせず受け入れた。
「絶対、秘密だぜ…」
僕は得意になって、色々なモノを直して見せた。
プラモデル・ゲーム・漫画本・玩具……。
ごく少数だけの秘密にしておいた、僕は当然リーダー格であり、いい気になっていたのだ。
そんなある日、いつものように秘密基地と称して勝手に出入りしていた空家に、クラスの女子がやってきた。
飼い猫が車に跳ねられたと言って、ダンボールを抱えている。
中を見ると、ぐったりとした子猫が1匹…虫の息というわけではなさそうだが…元気とは言い難い様子だった。
僕は、その子のことが好きだったのだ。
そうでなければ、医者に行けと言っただろう、要は好いところを見せたかったのだ。
僕は、みんなと違う、選ばれた人間なんだぜ。
そういうところを見せたかっただけ、子供じみた顕示欲。
僕は、ダンボールの子猫に手をかざし、傷を治してみせた。
しばらくすると、子猫が毛づくろいを始め、ニャアと可愛らしく鳴いた。
猫は跳ねられたことも…苦しかったことも覚えてない。
僕も、まだ治したと思っていた…戻したのではない…治したと…。
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