第12話 記憶の行く先
「ホントに凄いな」
「たいしたことないよ、簡単さ」
壊れたプラモデルを直して見せる僕。
小学校の時、僕はこの能力に気づいた。
掃除の時に、ふざけて遊んでいた、モップを振り回して女子の顔に怪我をさせてしまった。
「ゴメン」
慌てて、その子の顔を見ると、額がザックリと斬れていた。
ドロッとした暗く赤い血が顔の半分を覆う。
思わず、血を止めようと女の子の傷口に手を当てる。
黙って立ちすくす女の子。
余りの事態に、誰も動けずにいた…。
僕がふざけていたからだ……どうしよう……どうしよう……。
誰か助けてよ……この子の血を止めてよ……無かったことにしてよ……全部無かったことに……お願いだよ……なんとかしなきゃ……僕……僕嫌だよ……。
ヌメヌメとする血…暖かい血が……女の子が泣いている。
クラスの子達が、先生だとか…保健室だとか…救急車だとか…騒ぎ出した。
あぁ…もうダメだ……なんとか…なんとか…なんとか、なんとか、なんとか……。
僕の手の平が熱くなる……光りだす……えっ?
女の子の血が傷口に吸い込まれるように戻って行く…床に流れた血もすべてが……。
先生が走って教室に入ってきた。
「どうしたの!怪我したって誰が?」
「先生…ごめんなさい」
僕は泣きながら謝った。
「えっ?」
「僕が…僕が…」
「アナタが怪我したの?」
「違うよ…美奈代ちゃんが…」
「ん?なに?」
「美奈代ちゃん?」
美奈代ちゃんは、なにが起きたのか解らないといった顔で僕と先生を交互に見ている。
「もう…いたずらね…先生をからかわないの」
僕は軽くコツンと先生に叩かれた。
皆もなにが起きたのか解らないままにザワザワしている。
確かに、さっきまで教室の床には血溜りが出来ていた。
なにより、美奈代ちゃんの額は綺麗に塞がっている…さっきまでザックリと開いていた傷口が無くなっている。
だいたい、当の本人が怪我していたとは思えないほど呆気らかんとしているのだ。
ついさっきまで、足がガクガク震えていたのに……。
今は、窓ふきをしている。
僕が無意識にとはいえ、刻を戻した最初の日。
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