第2話 再会の時

 奈美を追いかけるつもりは無かった。

 僕は、あのとき…奈美の時間を戻したときに恋人から他人になる覚悟を決めたのだから。


 それでも…先回りするように、この街へ引っ越した。

(馬鹿なことをしている……)

 自分で自分を責める。

 未練……。

 そんな陳腐な言葉で、僕の想いをまとめて欲しくない。


 もしかしたら…もう一度…最初から…出会いから、やり直せるのかも。


 そんな気持ちもあった。


 でも、駅でウロウロしている奈美を見て…僕は、奈美の隣に居てはいけないと思い直した。


 二か月ぶりに見る、奈美の姿…少し頬がふっくらとしたように思う。

 最後に見たのは、病室で荒い息をする姿。

 青白い肌…大きな瞳は暗く窪んで光を拒む。

 それでも僕を見て笑う。

 苦しそうに笑う…笑う…笑う…。


 僕には助けることが出来た…いつだって…こんなにやつれる前にだって。


 でも…信じたかったんだ、神の奇跡ってヤツを………。


 僕は神を信じない。

 神は奈美を助けなかった…あるいは僕を助けなかった…。

 いずれにしても…奇跡は僕が起こした。


 それから…二か月。

「相変わらず…ドジなんだね…奈美」

 結局…泣いている奈美に手を差し伸べてしまう。

 コロコロと変わる奈美の表情。


 他人との関わりを絶つような生き方を選んだ、僕の心に差し込んだ光は暖かく…眩しかった。


 今日…僕の名前を呼ぶかも知れない…そんな期待もしたのかもしれない。

 呼び止められたときに、ドキッとした。

「ユキ」

 その名を彼女が口にすることはもう無い……。

 解っていたはず…だけど…すこしだけ。


 やっぱり僕は神を信じない。

 神は奈美を助けなかったし…僕を助けもしない…。


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